昔、「学研の科学」にゲルマニウム・ラジオが付録されていました。
庭に竹でアンテナを建て、ラジオが聴こえてきた時の感動は忘れられません。
しかも電源なしというのは摩訶不思議なことでした。
少しあとになり原理も理解したところで作成したものです。
電波とは何かを知った原点です。
受信周波数 535KHz - 1605KHz 検波方式 ゲルマニウム・ダイオードによるAM検波 出力 イヤホン 電源 不要
- 外部アンテナは必要です。受信レベルは外部アンテナに左右されます。
- 同調周波数の計算です(L=330uH、C=25pF-250pF)。受信周波数(535KHz - 1605KHz)をカバーしていることを確認できます。
- 実際にはポリバリコンの回転角度に対して周波数が直線的になるように電極構造(可変容量)が工夫されています。
ポリ・バリコンとバーアンテナの組み合わせ
ポリ・バリコン バーアンテナ 260pF 330uH 150pF 600uH
ゲルマニウム・ダイオード D1, 型番不明、代替品1N60,1N34,1S188 ポリ・バリコン(単連) VC, 260pF、CBM-113B-1C4 インダクタ L1, 330uH、太陽誘電LAL03NA331K 抵抗 R1, 1M、カーボン皮膜抵抗1/4W セラミック・イヤホン 型番不明、日本製
同調出力波形です。
- AMラジオに最小限必要な構成です。
- AMとは振幅変調方式(Amplitude Modulation)です。音声信号を搬送波の強弱として表現します。
- 同調回路でAM電波を選択します。
- ゲルマニウム・ダイオードで微小電圧を検波します。シリコン・ダイオードは向いていません。
- 検波器はAM信号をゲルマニウム・ダイオードD1とセラミック・イヤホンXPHONEの容量成分を利用して半波整流し、音声に変換します。
- 整流用のコンデンサCを接続してもよいのですが、セラミック・イヤホンがCとして機能します。測定したところ約0.01uFあります。
- R1は負荷抵抗です。この負荷抵抗がないとダイオードに(直流方向の)電流が流れず、整流機能を果たしません。セラミック・イヤホンは直流電流を通しません。
- 妙に聞こえるかもしれませんが、(直流方向の)電流の流れないダイオードは単なる小さなコンデンサとして機能します。
- R1が小さいと負荷が大きすぎて音が小さくなります。わずかに電流が流れればよいので、大きめの負荷にします。
- 正確に言えばこの検波器はAM変調信号の復調器です。振幅をダイオードで半分にし、コンデンサで平均化することで音声を取り出します。
- 電波の電力を音声に変換します。
- そのため、アンテナで多くの電波を受ける必要があります。
- 音声出力も小さいため、クリスタル・イヤホンを使用します。マグネチック・イヤホンを鳴らすことはできません。
検波出力波形です。
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症状はラジオを受信するものの音が小さいというものです。
はじめはゲルマニウム・ダイオードを疑い、新品の1N60に交換したところ逆にまったく聞こえなくなりました。
原因はクリスタル・イヤホン(最近はセラミック・イヤホンというらしい)が経年劣化していたようで、交換したところ良好になりました。
そこで古くなっていたポリ・バリコンも交換し、ゲルマニウム・ラジオではアンテナの役目を果たしていないバーアンテナも単なるマイクロ・インダクタに変更しました。
バーアンテナは330uH程度です。
この変更により、小型軽量になりました。
さて新品の1N60で聞こえなくなるという思わぬトラブルからゲルマニウム・ダイオードの性能が判明しました。
なんと型番不明のゲルマニウム・ダイオードが1N60よりはるかに性能がよいのです。経年劣化していたクリスタル・イヤホンを鳴らすことができたのはこれだけでした。
よく見てみると、1N60より一回り小さく、点接触する金属線が見えないくらい細いことがわかります。接点が小さいことが性能の差に出ているようです。
今となっては入手困難でしょう。
型番不明
1N34、日立
1N60、ユニゾン
1S188、三洋
1SS108、日立
聞き比べてみたところ1N34、1S188は1N60と同等性能のようです。
性能がよいとうわさのショットキー・バリア・ダイオード1SS108でも検波できますが、選局度がよくありません。
電波の検波電圧は微小電圧であり、ショットキー・バリア・ダイオードの立ち上がり電圧0.2Vよりはるかに小さいところでの特性が良くないことが原因と思われます。
ゲルマニウム・ダイオード 性能 型番不明 ◎ 1N34 ○ 1N60 ○ 1S188 ○ 1SS108 △