BTL
はじめに
- 最近バランス接続のヘッドホンが出回り始めました。
- スピーカーを使っている方からすれば何をいまさらと思うかもしれません。
- アンバランス接続とバランス接続の違い、シングル・エンドとBTL(バランス駆動)の違いを解説します。
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アンバランス接続とバランス接続
- アンバランス接続とは3線接続です。代表例はヘッドホン・ケーブルです。
- バランス接続とは4線接続です。代表例はスピーカー・ケーブルです。
- コスト削減のために、4線ではなく3線を使ってきました。
- ※もともとバランス(平衡)やアンバランス(不平衡)は信号伝送の用語です。
- ※ここの解説は厳密ではありません。
- ※平衡とは2つの信号線がそれぞれ同じ立場(対等な立場)で動作します。平衡とは釣り合っているという意味です。
- ※一方を基準にしているわけではありません。ある意味、浮いている状態にあります。
- ※そのため、外来ノイズが2つの信号に同時に入っても、影響を受けません。もちろん片側だけに入ったらノイズになります。
- ※釣り合っている天秤を上下に揺らしても均衡は保たれます。もちろん天秤の片側だけ触ったら揺れます。
- ※平衡状態にあるので、信号線をシールドすることもできます。シールドが平衡の条件ではありません。
- ※シールドとは電気的な遮蔽です。
- ※不平衡とは2つの信号線の立場が同じではありません。つり合いの取れていない状態です。
- アンバランス接続の最大の弱点はクロストークです。
- クロストークとは左の音が右に、右の音が左に漏れる現象です。
- ケーブルの理想はゼロΩですが、実際には小さな抵抗があります。
- 共通GNDのわずかな抵抗成分が原因でクロストークが発生します。
- 一般的にケーブルの抵抗は0.1Ω以下です。
- この例ではクロストークが-50dBも発生しています。
- CDのダイナミックレンジが約96dBですから、どれほど大きいかわかるでしょう。
- スピーカー・ケーブルはバランス接続ですから原理上クロストークが発生しません。
- このクロストークを低減するために、バランス接続のヘッドホンが登場しました。
- ※従来からケーブルを左右分離しているヘッドホンもあります。アンバランスなのはプラグ部分のみです。
- ※こうしたアンバランス接続(例えば全体の10%)のヘッドホンはほとんどバランス接続(例えば全体の90%)といえます。
- ※リケーブルをバランス接続に改造して方もいるでしょう。
シングル・エンド駆動とバランス駆動
- 通常のアンプはGNDを基準に正位相を出力するシングル・エンドです。
- 一方でBTL(バランス駆動)はGNDを基準に正位相と逆位相を出力します。
- もともとステレオ・アンプを出力増強するためにモノラル・アンプとして使う方法をBTL接続と呼びます。
- BTL=Bridged Tied Load=Bridged Transformer Less=Balanced Transformer Less
- アンバランス接続(3線接続)では共通GNDを使う関係上、シングル・エンド駆動しかできません。
- バランス接続(4線接続)ではシングル・エンド駆動かバランス駆動を選べます。
- バランス接続だからといって必ずしもバランス駆動する必要はありません。
- バランス接続とバランス駆動の違いを理解できたでしょう。
- バランス駆動の利点はアンプの電源電圧が低くても大きな出力を得られます。
- 一方でバランス駆動の欠点はアンプのコストが倍になります。
バランス接続用アンプ
バランス接続ヘッドホンを駆動する電圧アンプを紹介します。
- 現在のところオーディオ再生機器はシングル・エンド出力が大半です。
- そこで入力はシングル・エンドにします。
- 出力をバランス駆動します。
- バランス接続の利点であるクロストークの低減を活かすために、アンプ内部も左右分離設計します。
- アンプ内部でクロストークしては意味がありません。
- 電源電圧は3Vです。単三2本で動作します。
- R3とC5はZobelフィルタで発振防止用です。
- 利得は44dBあるので、入力電圧を絞ってください。
- もともとこのアンプICはポータブル機器用のため利得が高いです。
- BTL駆動のため、出力カップリング・コンデンサは不要です。
部品表
- U1,U2=NJM2073またはTDA2822
- R1,R2=10kΩ(1/4W)
- R3,R4=15Ω(1/4W)
- C1,C3=10uF(電解コンデンサ,25V)
- C2,C4=0.01uF(積層セラミック・コンデンサあるいはフィルム・コンデンサ)
- C5,C6=0.22uF(積層セラミック・コンデンサあるいはフィルム・コンデンサ)
- C7=100uF(電解コンデンサ,25V)
- C8,C9=0.1uF(積層セラミック・コンデンサ)
- 電源は単三2本
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