衝突被害軽減ブレーキの研究
衝突被害軽減ブレーキの義務化
- 衝突被害軽減ブレーキについて論理的思考で考えてみましょう。
- 通称、自動ブレーキとも呼ばれていますが、必ず動作すると勘違いするため、好ましくありません。
- 乗用車や軽自動車で2021年の新型車(新車ではない)から衝突被害軽減ブレーキの義務化を検討しています。
- ※新車ではなく新型車。つまり国土交通省から新しい型式をもらう車のこと。
- ※型式は車検証に記載されている。
- 衝突被害軽減ブレーキに3つの条件が課せられます。
- (1)静止車両に対する試験
- 前方に静止した車両に40km/hで衝突しないこと。
- (2)走行車両に対する試験
- 前方20km/hで走行する車両に60km/hで衝突しないこと。
- (3)歩行者に対する試験
- 5km/hで横断する歩行者に30km/hで衝突しないこと。
- さて問題はこれが昼間なのか夜間なのかわからないことです。
- 昼間なら条件を満たす衝突被害軽減ブレーキがありますが、夜間ではまだ技術的に難しいです。
- 衝突被害軽減ブレーキは「条件によっては作動しない」と注意書きがあり、「夜間」に作動する保証がないことは意外と知られていません。
- つまり、1日のうち半分は役に立ちません。
- ※はじめから50%の確率で動作しない(かもしれない)。
- 作動条件は限定的です。実際、事故で衝突被害軽減ブレーキが作動しなかったことが報告されています。
- ※正確にいえば、夜間の試験は行われていない。作動するかもしれないし、しないかもしれない。確証がない。
- ※あるメーカーはある程度の明るさがないと、機能そのものを停止してしまう。
- ※カメラの夜間感度が低いため、モノを認識できないからだ。
- えー、そんなことしらなかったと、大多数のドライバーが思うでしょう。
- それくらい誤解、勘違いが蔓延しています。期待だけが一人歩きしています。
- ちなみにインフルエンザ・ワクチンの有効性は約60%です。100%ではありません。
- ワクチンを受けたからといって、かからない保証はありません。
- ※安全性に絶対はないので、確率で考えなければならない。
- ※マスコミや評論家はこうした「事実」を伝えてほしい。
- ※とある辛口評論家しか、こうした事実を伝えていない。当然のことながら批判にあうようだ。
- ※批判を受けようと「事実」は曲がらない。
著作権と免責事項
- 直接間接に関わらず、いかなる損害も筆者は責任を負いません。
- 記事は無保証です。修正義務や回答義務を負いません。
夜間は2019年から試験
- 2019年4月から「夜間歩行者」に対応を始めました。「夜間の歩行者検知機能」と呼びます。
- それ以前は、「夜間」対応していませんでした。夜間の試験は行われていませんでした。
- 原則「昼間」しか機能しません。
- この事実を意外としりません。「夜間」は衝突被害軽減ブレーキが機能するとは限りません。機能するか確認していません。
- 「衝突被害軽減ブレーキ」はまだ発展途上の段階であり、制限事項に気を付けなければなりません。
- ※万能ではないため、メーカーは注意喚起している。
- ※「機能には限界があり、作動しない場合があります。機能を過信せず、安全運転を行って下さい。」
- まだ誤作動もあります。誤認してブレーキしていけないところでブレーキが働いたりします。
- ※例えば「すだれ」のかかった駐車場には入れない。衝突被害軽減ブレーキを解除しなければならない。
- 2019年以前の衝突軽減ブレーキはまだまだヨチヨチ歩きでした。
- やっと使いものになり始めたと言ってよいでしょう。カーナビが使い物になるまで時間を要しました。
- 日々進化しています。枯れた技術となるためにはまだ時間がかかるでしょう。
- ※やっと暗い夜間でも撮影できるカメラ・モジュールが登場した。
- ※カメラ方式もレーダー方式も一長一短がある。
- ※カメラ方式は雨や霧に弱い。暗いところも弱い。逆光や対向車の強い光にも弱い。これはカメラの宿命だ。
- ※レーダー方式は対象が何であるかを判断しにくい。みんなレーダー方式を採用するとレーダー干渉を起こし誤動作する。
- 2019年は「夜間」の規定が追加されたため、これ以前と以降では大きな差があります。
- JNCAP(予防安全性能評価試験)が行われました。
- ここで夜間における、対歩行者の衝突被害軽減ブレーキ試験を採用したことが影響しています。
- 結果は一部の車種のみクリアできました。やはり夜間の条件は難しく衝突します。
- 結果リストはこちら
- 国土交通省はたとえ、ヨチヨチ歩きであっても、衝突被害軽減ブレーキの搭載を推し進めてきました。
- 100%でなく、たとえ10%(この数値に根拠はない)しか機能しなくとも、できるだけ事故を減らそうという取り組みです。
- ※日本人は「ゼロリスク」を求める傾向があるが、そんなものはない。
- ※副作用のない夢のような薬はない。
- ※同様に100%安全な車はない。
- ※できるだけリスクを減らすことしかできない。
- 参考
- 「建築基準法」も1981年6月1日に改正されました。
- これを「新耐震基準」と呼びます。
- これを境に耐震基準が大きく変わりました。
- (1)旧耐震基準
- 震度5程度の地震で建物が倒壊、あるいは崩壊しなければよい。
- ※逆に言えば、損傷はありうる。いわゆる全壊はしないけど半壊するかもしれない。
- ※さらに震度6〜7については規定されていない。つまり震度6〜7で倒壊するかもしれない。
- (2)新耐震基準
- 震度5程度の地震を受けても建築材の各部が損傷を受けない。
- 震度6〜7程度の大規模地震で倒壊、あるいは崩壊しない。
- だから建物の評価が1981年を前後にして大きく変わる。
- 耐震の基準が大きく変更されているからである。
誤作動、副作用
- 一つ気になることがあります。
- それが誤作動です。
- センサの前を鳥や昆虫が横切った場合、誤作動しないだろうか。
- それまで車と認識しており、ゴミの影響で認識を取り消さないだろうか。
- 逆にゴミを障害物と誤認してブレーキをかけられても困る。
- あるいはセンサ故障したとき誤動作しないだろうか。
- ※某新型ジェット機はセンサの故障により補助装置が誤動作して墜落した。
- ※センサ故障が原因で事故を起こされても困る。
- 洪水で冠水した道路で誤動作しないだろうか。
- つまり、通常時ではなく、想定外の状態で誤動作しないであろうか。
- ちょっと意地悪であるがステレオカメラ方式の場合、透明なガラスを認識するだろうか。
- ※つまりレーダー方式ではない場合である。
- コンビニの外観はガラスでできており、認識してくれないと突っ込んでしまう。
- また洪水などで、道路を認識できない場合、車線はみだし機能は動作しないだろう。
- 機能しない分には問題ないが、悪さしないであろうか。
- 誤作動で事故を起こされては困ります。
- 主従関係を誤らないであろうか。
- 運転手が主人であり、衝突被害軽減ブレーキは家来です。
- 家来がご主人の指示に従わなかったり、邪魔してはいけません。
- 認識できないために走行できないなどの問題を発生しないだろうか。
- 冠水した道路を障害物と誤認してしまいブレーキをかけ続けないだろうか。
- あるいは逆にアンダーパスの冠水した道路を障害物として認識するだろうか。
- 車と歩行者だけしか認識しないのも困るし、誤認しても困ります。
- 遠くにある大きな広告看板に車の写真が描かれていて、これを近くにある車と誤認してブレーキをかけられても困ります。
- そんなことは起こるはずはないと言い切れるでしょうか。錯視を利用した「だまし絵」があります。遠くにあるのに近くに見えます。
- ※そもそも衝突実験に紙に描かれた車を用いており、それで停止することがおかしい。
- ※本物の車と紙に描かれた車を識別できていない。紙に描かれた車なら衝突するはずで、本物の車と識別できていない証拠だ。
- ※これでは看板に描かれた車を本物の車と誤認する。
- 実際、トンネル内の照明を対向車のヘッドライトと誤認してしまう事案が起きています。
- 道端にたまたまおいてあったマネキンや案山子を人として認識して、ブレーキを掛けられても困ります。
- 前方に事故を起こしてひっくり返っている自動車を認識するだろうか。べこべこにつぶれた車を認識できるだろうか。
- 変形していても車です。正しい形の車だけではありません。
- 通常時は正しく動作するでしょう。問題はこうした異常事態に対応できるかです。
- 運転者が回避行動をした場合、衝突被害軽減ブレーキが解除されて、アシストしなくなっても困ります。
- 衝突回避不能だからと言って、アシストを途中で放棄されても困ります。
- ※ブレーキ倍力装置やパワーステアリングは運転者の回避行動に関係なく機能する。
- ※では同様に衝突被害軽減ブレーキも運転者の意思に関係なく機能するほうが良いのだろうか。
- ※自動車の判断を優先させた場合、センサ故障していると正しく動作しない。
- 運転者と自動車のどちらの判断を優先させるかは悩みどころです。
- 条件も複雑になります。適切に動作してほしいが、誤動作はしてほしくない。
- まして運転の邪魔になるようでは意味がありません。
- これは自動運転の永遠の課題です。
- 線路内に取り残され、遮断機が下りてしまい、緊急的に遮断機を破壊してでも脱出したい場合もあります。
- 遮断機を障害物と認識し、自動ブレーキが働いてしまうと脱出できません。
- これは副作用であり、ジレンマです。
- 人間がいかに複雑な状況判断しているかわかるだろう。
- 考えれば考えるほど衝突被害軽減ブレーキの作動条件は複雑になります。
「天下一品」の看板を「進入禁止」と誤認
- Honda SENSING(安全運転支援システム)は「天下一品」の看板を「進入禁止」と誤認してしまうことは有名です。
- これは一例に過ぎません。
- 機械による誤認はゼロにできません。誤認はあります。
- 「ある」の証明は一つでもあればよい。誤認はあることを前提にしなければなりません。
- こうした誤認が誤作動につながり、運転手の意図しない動きをしないか危惧しています。
- 単なる誤認だけで支障がないなら構いませんが、事故を起こされては困ります。
- いくら人間が注意深く操作しても、機械の誤動作の責任まで負わされるのは困ります。
2021年4月1日スバルは衝突被害軽減ブレーキのリコールを届け
- 標識や対向車を衝突対象と認識する。
- 誤って自動ブレーキが作動する可能性がある。
- 34件の不具合が報告されている。
踏み間違い防止装置(アクセルとブレーキ)
- 衝突被害軽減ブレーキと関係していますが、踏み間違い防止装置があります。
- これは人の間違いを抑制するので制御の判断が難しいです。
- 人の勘違いを防止するのですから、本来と反対の判断をしなければなりません。
- アクセルを踏んでいるのにブレーキをしなければなりません。
- 実際にはブレーキをかけるのではなく、アクセルを抑制(制限)します。
- この判断基準は難しいのです。
- 何をもって勘違いしているのか判断しなければなりません。
- 間違って急加速しているのか、本当に急加速しているのか、判断しなければなりません。
- 障害物がある場合には判断できますが、障害物がない場合は判断できません。
- 停止状態から急加速(急発進)もないことはないですが、機能しても差し支えないでしょう。
- ではのろのろ運転しているときに踏み間違えたら、それを誤発進と認識することができるだろうか。
- 急な上り坂で、本当に急加速する必要があるのかもしれません。べた踏み坂なんてありますよね。
- 条件を考えれば考えるほど判断が難しいことがわかります。
まとめ
- 衝突被害軽減ブレーキは100%機能するものではありません。動作は保証されません。
- あくまでも補助的な機能です。
- たとえ10%(この数値に根拠はない、小さいの意味)であっても事故を防いだり、被害を軽減しようという意図や狙いです。
- 努力目標といったほうが正しいでしょう。
- 現時点においては機能したらラッキー程度に考えましょう。
- 今の技術力では100%保証できません。
- これが「機能には限界があります」の解釈です。
- そして今後ますます機能や性能が向上していくでしょう。
- このとき、主従関係や誤作動をどうすべきか慎重に考える必要があります。
- 誤作動してはいけないですし、運転を邪魔してもいけません。
- 誤作動ではないが、副作用で運転の邪魔をしてもいけません。
©2020 All rights reserved by Y.Onodera.