電力アンプ
名称について
- このアンプの正しい名称は「電力アンプ」です。
- しかしこれではパワーアンプ=電力アンプで従来との違いがわかりません。
- この「電力アンプ」は負荷の変動によらず、入力電圧に比例した電力を出力します。
- 当たり前といえば当たり前ですが、その当たり前のことが今までできていなかったのです。
- その当たり前のことを実現したパワーアンプです。
コラム:現時点で電圧帰還、電流帰還の定義、解釈は曖昧
- どうも混乱の元は「電圧帰還」、「電流帰還」の正確な定義がないためのようです。
- ※日本語では帰還、英語ではフィードバックです。
- 出力を監視し入力を調整して安定を図るのがフィードバック制御の基本です。
- 最近(1990年以降)、世の中に登場した、「電流帰還型オペアンプ」に注目が集まってしまい、これだけを意味するという印象が強いようです。
- 確かに「狭義の意味」では正しいです。電流帰還型オペアンプの存在しなかったディスクリード時代の電流帰還型アンプもその意味では正しいです。
- しかし「広義の意味」では電圧をフィードバックする回路、電流をフィードバックする回路も含まれます。
- たとえば、トランジスタの電流帰還バイアス(エミッタ接地バイアスの一種)は電流のフィードバック制御によって安定を保つ回路です。
- 定電圧回路は出力電圧をフィードバック制御するので動作原理は電圧帰還です。定電圧回路の応用例が電圧増幅器です。
- 定電流回路は出力電流をフィードバック制御するので動作原理は電流帰還です。定電流回路の応用例が電流増幅器です。
- 電流帰還型オペアンプの仕組みはプラス入力が信号入力、マイナス入力がフィードバック用で電流をセンシングし、後段で電流電圧変換して出力します。
- 従来の電圧帰還型オペアンプの置き換えができるように考慮されているため、少し風変わりな電流帰還です。もちろん反転増幅ができないなど制約もあります。
- 簡単に言えば、電流帰還型(オペ)アンプに電流増幅器が組み込まれています。
- これらの言葉にこだわる理由はないので、現時点においてはできるだけ使用を控えることにします。
- 電圧増幅ではなく電流増幅を用いると周波数特性が改善されます。
- 直感的にはトランジスタが電流増幅素子だからです。もともとトランジスタは電流の扱いを得意とします。
- トランジスタの重要指標に電流増幅率hFEがあります。入力電流に対して出力電流が何倍かという指標です。
はじめに
- 電力アンプです。
- 基礎知識としてオーディオ入門(pdf)を用意しました。
- 出力電力のアップ、周波数特性の改善、歪率の改善を目標にしました。
- 出力電力アップのためにトランジスタの熱暴走を防止します。
次世代パワーアンプ
- LIIE搭載のパワーアンプです。
- コストを度返しした、贅沢な回路設計をしています。
著作権と免責事項
- 個人利用に限定され、著作権者の許可なく商用利用できません。
- 直接間接に関わらず、使用によって生じたいかなる損害も筆者は責任を負いません。
- 仕様は予告なく変更されることがあります。
発想の転換
- 子供のころからたくさんのアンプを作ってきました。
- たくさんのアンプの専門書を読み漁ってきました。
- しかしどれも電圧増幅器であって電力増幅器ではありませんでした。
- 実際に特性を測定してみると、負荷の影響を受けて電力増幅していません。
- スピーカーへいかに電圧を伝えるかであって、いかに電力を伝えるかに注目した専門書はありませんでした。
- 代表的なスピーカーの公称インピーダンスは8Ωであり、出力バッファーはアンプの内部抵抗をいかに下げるかにしか注目していません。
- 今風に言えばいかにダンピングファクタを上げるかです。
- これはインピーダンス変換(あるいはインピーダンス・マッチング)ともいえ、真空管時代の出力トランスと発想としてはなんら代わるものではありません。
- スピーカーのインピーダンスは固定を前提としてアンプが設計されてきました。
- しかし、現実のスピーカーのインピーダンスは何倍も変動します。
- インピーダンス変動の影響をうけ、低音と高音が再現できないばかりでなく、音色も再現できません。
- 前提を誤れば結果も誤ります。当然のことです。
- スピーカーの音量は電力に比例します。これは音も電力もエネルギーだからです。
- 簡単にいえばスピーカーはエネルギー変換装置です。
- 入力する電力を間違えば、出力する音も間違います。
- そこで、発想を転換し、スピーカーのインピーダンスは変動することを前提に、電力増幅器の実現を目指しました。
- これは画期的なアイデアであり、功を奏しました。
アンプの出力電力特性
- アンプの駆動方式の違いを模式化(イメージ化)したグラフです。
- 横軸はスピーカーのインピーダンス、縦軸は出力電力です。
- 電圧駆動アンプはインピーダンスが増えると出力電力が低下します。(P=V2/R)
- 公称インピーダンスの4倍で6dBも低下します。
- このため低音不足と高音不足となります。スピーカーのインピーダンスは低音と高音で高くなるからです。
- 電圧駆動アンプはインピーダンス変動がなければスピーカーへ正しく電力を伝えます。
- 電流出力アンプはインピーダンスが増えると出力電力が増加します。(P=I2R)
- このため低音と高音が強調されすぎてドンシャリとなります。
- 電力アンプは出力電力が一定になるように工夫しています。低音と高音が正しく再現されます。
- 電力アンプに副作用はなく、インピーダンス変動があってもなくても正しく電力を伝えます。
疑問と補足
- 電力増幅器の電力出力特性をみると、(入力が一定なら)インピーダンスが増えても出力電力が一定です。
- ということは、スピーカーを外して無負荷にすると、出力電圧が振り切れるのでは考えるでしょう。
- ところが、実際にはそうなりません。
- 無負荷時の出力電圧波形をオシロで確認していますが、きれいなものです。
- 理由は追従可能な負荷インピーダンスに限度があるからです。
電圧増幅器と電力増幅器
- スピーカーの公称インピーダンス例は8Ωです。
- しかし現実には周波数によってインピーダンスは変動します。
- このインピーダンス変動が電圧増幅器と電力増幅器にどのような影響を与えるでしょうか。
電圧増幅器(電圧駆動アンプ)
周波数 | インピーダンス | 出力電圧 | 出力電力 |
160Hz | 23Ω | 2.83V | 0.35W |
1kHz | 8Ω | 2.83V | 1W |
- 電圧増幅器は入力電圧が一定なら、負荷に影響されず出力電圧が一定です。
- そこで出力電力を計算してみます。
- 160Hzのとき0.35Wで、1kHzのとき1Wです。
- 音量は電力に比例するので、160Hzの音量は小さくなります。
- 入力電圧が一定(ボリューム固定)にも関わらず、160Hzと1kHzで音量が異なります。
- これは本来あるべき姿ではありません。
- 160Hzと1kHzでボリュームを動かしたような影響があります。
電力増幅器(電力アンプ)
周波数 | インピーダンス | 出力電力 |
160Hz | 23Ω | 1W |
1kHz | 8Ω | 1W |
- 電力増幅器は入力電圧が一定なら、負荷に影響されず出力電力が一定です。
- 160Hzのとき1Wで、1kHzのとき1Wです。
- 160Hzと1kHzで音量が同じです。
- これが本来あるべき姿です。
- 入力電圧が一定(ボリューム固定)ですから、音量は変動しません。
電力アンプの必要性
- それは「パワーアンプ=電力増幅器=電力アンプ」だからです。
- 従来の「電圧駆動アンプ=電圧増幅器」であって、厳密に言えばパワーアンプではありません。パワーとは電力です。
- 電圧駆動アンプはスピーカーのインピーダンス=固定抵抗を前提にしており、パワーアンプの代用に過ぎません。
- しかし現実にスピーカーのインピーダンスは変動します。
- スピーカーのインピーダンスは固定抵抗ではなく可変抵抗です。
- そもそもの話ですが、なぜパワーアンプが必要とされるのでしょうか?
- なぜボルテージ・アンプではいけないのでしょうか?
- それはスピーカーの動作原理に関係しています。
- スピーカーの動作原理はモーターと同じです。
- スピーカーが空気を押したり引いたりする仕事をして音を出します。
- だから音はスピーカーの仕事量に比例します。
- 仕事量とは電気の世界では電力です。
- だからパワーアンプ(電力増幅器)が必要です。
- 必要としているのはパワーアンプであってボルテージ・アンプではありません。
スピーカーは電力基準
- スピーカーの特性は電圧(電圧駆動アンプ)を基準にして測定されている「はず」だという都市伝説があります。
- 実際には日本工業規格(JIS C5532)で入力1W、正面1mと規定されています。
- 国際規格である国際電気標準会議(IEC 60268-5)でも同様です。
- スピーカーのカタログでもdB/W/mと記述されています。
- スピーカーの音量はその動作原理からも電力に比例します。だからこそパワー(電力)アンプが必要です。
- スピーカーの発明(ベル1876年、ライスとケロッグ1925年)された約100年前から動作原理は変わっていません。
- 電圧駆動アンプ(1950年以降)の登場する以前からスピーカーは存在しており、電圧駆動アンプを基準にしているわけではありません。
仕様
- スピーカの音圧レベルは1W入力時の音量です。
- カタログ値は80から90dBです。これは騒音問題になるレベルです。
- これはアンプの最大出力に1Wも必要ないことを意味します。
- 工夫をしています。詳細は企業秘密です。
- ギャングエラーを避けるため電子ボリュームです。
- 電源電圧は±12Vです。
仕様
駆動形式 | 電力方式 |
最大出力電力 | 8Ω負荷時1W |
適合インピーダンス | 6〜16Ω |
再生周波数帯域 | 20〜20000Hz |
サイズ | 160x150x50mm |
重量 | 885g |
電源 | AC電源 |
チューニングできるアンプ
- この電力アンプにはユニークな特徴があります。
- 電力アンプの理想はどんなインピーダンス変動にも影響されないことですが、実際には全域で押さえ込めません。
- スピーカのインピーダンス変動幅は公称インピーダンスの数倍です。
- そこで、公称インピーダンスにあわせてインピーダンス変動が最小になるようにチューニングする仕組みを取り入れました。
- これにより、使用するスピーカに最適な電力アンプになります。
電力アンプの周波数特性
- 上記はアンプの出力周波数特性です。
- 入出力特性を比較しやすいように0dBにシフトしています。
- フラットで申し分ありません。
- 両電源設計のため、カップリング・コンデンサが不要で低音の低下がありません。
インピーダンスの影響
- 公称インピーダンス8Ω設定の実測値です。
- 最大出力1Wでほぼ一定です。
- 公称インピーダンスの4倍で1dB以内です。
歪率の計測
- 正確には全高調波歪率です。THD:Total Harmonic Distortion
- 0.25%以下です。非常に優秀です。
- 測定限界は0.05%です。正弦波の精度に依存します。
- そのため、精度の良い測定環境ではもっと低い値になります。
- 8Ω負荷です
まとめ
- 設計どおりの性能を確認できました。
- 公称インピーダンスの4倍の変動があっても電力変動は-1dB以内に抑えられています。
- 現在主流の電圧駆動アンプなら公称インピーダンスの4倍の変動で電力変動は-6dBもあることを考えれば大幅に改善されています。
- 最大出力電力も設計どおりです。
- 周波数特性も申し分ありません。
- SN比も大きく、無音時のホワイトノイズもほとんど聞こえません。
- 再生側のノイズのほうが気になります。
- カップリング・コンデンサもないため、ポップノイズもほとんどありません。
音の良し悪しとは
- 誤解のないように念のため記述しておきます。
- 「性能の良し悪し」と「音の良し悪し」は別物です。
- どんなに性能が良くても音を良いと感じるかは個人の好み、感覚、感性で決まります。
- 音の良し悪しを相対的にも絶対的にも決めることはできません。
- 他人の評価が自分に当てはまるとも限りません。
- たとえば高音の好きな人、嫌いな人がいます。
- 耳の特性も個人によって異なります。若者は高音に敏感ですが、ご年配は高音に鈍感です。
- 「音の良し悪し」の評価は個人にゆだねられています。
興味のある方へ
- さまざまな方から問い合わせを受けています。
- 製品化してくれないか、製品化したいとの依頼もあります。
- 眉唾ものではないかと疑う方もいらっしゃいます。
- 今までの常識を正すことになるので、批判する方もいます。
- 疑問を抱くのは当然です。夢の電力アンプだからです。
- パワーアンプの再発明といってもよいでしょう。
- 発明とは後でわかってしまえば、たったそんなことかというのがほとんどです。
- ニュートンの生まれる何万年も前からりんごは木から落ちていました。
- 誰もが検証できるように実測値を掲載しています。
- 理論の裏づけ、データの裏づけがあります。
- 理屈なしに、実際に聞いていただいた方はみな驚いています。
- 有償になりますが、技術供与などの相談に乗ります。
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