デジタルオシロスコープ
はじめに
- 安価なデジタルオシロスコープ・キットが発売されたので評価してみたいと思います。
- あまり語られていない情報をお伝えします。
- 手元にはしっかりしたオシロスコープを保有していますが、高価です。
- 電子工作を始めたばかりの方に高価な投資はできません。
- そこで性能をある程度割り切ります。具体的には音声帯域(20Hzから20KHz)に割り切ります。
- それ以上の性能を期待してはいけません。
- オシロスコープで信号波形を確認できないよりできた方がよいのは言うまでもないでしょう。
- DSO:Didital Storage Oscilloscope
- オシロスコープの世界もアナログからデジタル化の波が押し寄せています。
- 一般のデジタルオシロスコープは高速処理のFPGAで実現しています。
- DSO138はマイコンで実現しています。これも高性能なマイコンのおかげです。
- 搭載しているマイコン(STM32F103C8)は最高72MHzで動作します。
- 表示には携帯電話のLCDが採用されています。携帯電話普及のおかげです。
- STNではなくTFTなので、見やすいです。
著作権と免責事項
- 直接間接に関わらず、使用によって生じたいかなる損害も筆者は責任を負いません。
- 仕様は予告なく変更されることがあります。
DSO138の種類
型番 | SKU-20-010-214 | 13803K | 13804K |
メーカー | Sain Smart | JYE Tech | JYE Tech |
基板色 | 黒 | 赤 | 赤 |
Firmware | 113-13801-040 | 113-13801-050 | 113-13801-050 |
R11 | 1.5K | 150 | 150 |
SMD | ハンダ済み | ハンダ済み | 要ハンダ |
価格 | \3,300 | \3,780 | \3,400 |
- DSO138キットにはいくつかの種類があるので、まずはその違いを解説します。
- ※ここに紹介していないモデルがありますが、それは後程解説します。
- 開発元はJYE Techです。
- まずはSain Smart版があります。黒い基板が目印です。
- Sain Smart版はR11=1.5Kでファームウェアが少し古いです。
- JYE Tech版はノイズ低減のためにR11=150に変更されています。
- ではSain Smart版もR11=150に変更したらよいのではと考えますが、増幅度も変わってしまうのでファームウェアも更新しなければなりません。
- ところが最新のファームウェアは提供されていません。
- UART経由(TX,RX)でファームウェアを更新する仕組みがあります。
- 13803Kと13804Kの違いは表面実装部品(SMD)が実装されているかの違いです。この違いは大きいです。
- ハンダスキルのある方は表面実装部品を実装できるでしょう。ピンセットを使いかなり大変な作業です。手先が器用な方しかできません。
- そのため電子工作初心者に13804Kをお勧めできません。組み立てに失敗する確率が高いです。
- 米国のフォーラムでも動作しないとの報告がありますが、体格のよい方が組み立てるのは無理があります。
- 誰もが組み立てられるわけではありません。
- さて語られていないモデルがあるとお話ししました。
- それは模倣品(fake,counterfeit)、いわゆるコピー商品(偽物)です。
- JYE Techのページに正規品と模倣品の見分け方が記述されています。
- 特定の穴に涙パターン(Tear Drop)があるかです。
- DSO138ロゴのわきにあるパターンです。涙パターンがあれば正規品です。
- 秋月電子で販売している13804Kのパターンを見てみましょう。シルク印刷に隠れてわかりませんが涙パターンがあります。
- あとはみなさんの判断に任せます。
- ※情報が錯そうしているので、確定情報ではありません。ご注意ください。
- ※JYE Techの模倣品リストにSain Smartも掲載されています。
- ※模倣品が正規品と見分けがつかないくらいに修正されているかもしれません。
- JYE Techは対抗策として、最新のファームウェアを提供しなくなりました。
- とはいえ模倣品はすでに最新のファームウェアになっています。ソースを改変して作ったのかは不明です。
- ファームウェアはオープンソースと言いながら、最新のソースが提供されていません。これも矛盾しています。
- コピー商品は許されるものではありませんが、オープンソースということは誰もが利用でき、似たような製品がでてくる可能性を想定しなければなりません。
- それがオープンソースというものです。それが嫌ならオープンソースを利用すべきではありませんし、オープンソースにすべきではありません。
組み立てのポイント
- まずは部品点数を確認をします。つまりは部品の分類をします。過不足があるかもしれません。
- 部品(セラミックコンデンサ0.1uF)が一つ不足していました。
- リード抵抗は金属被膜抵抗で5本線で色分けされています。小型のためなかなか見分けがつかないのでテスターで確認します。
- 表面実装部品(SMD)は多めに添付されています。
- ハンダ付けの計画を立てましょう。無計画は失敗のもとです。
- 当然のことながら道具も重要です。30W程度のハンダコテを使います。60Wでは大きすぎます。
- ハンダ線も0.6mm径の鉛入りハンダを使います。1mm径のハンダでは太すぎます。鉛フリーハンダは扱いにくいです。
- マニュアル通りに作りましょう。途中、ハンダジャンパー(JP3,JP4)があるので忘れないようにしましょう。
- ※JP3はアナログGNDとデジタルGNDを1点接続します。JP4は3.3V出力スイッチです。
- 表面実装部品(SMD)はピンセットを使い慎重にハンダ付けします。つけ過ぎたハンダはハンダ吸取線で取り除きます。
- リード部品はセロハンテープで仮固定するとずれを防止できます。
- リード部品は穴の幅に合わせてあらかじめピンセットで曲げておきます。
- 一か所でも間違いがあると動作しません。間違いの許されない世界です。
- 時間をかけて丁寧に作りましょう。
操作のポイント
- ファームウェア(113-13801-040以降)から測定表示が可能になりました。この方法はマニュアルに記述されていません。
- SELで時間軸を選択後、OKを2秒以上押すと、測定表示されます。
- この測定表示があることで、本格的なオシロスコープとして利用できるようになりました。
- SELでの選択色は水色です。
- ゼロV補正機能があります。
- SELで縦軸位置(左)を選択後、OKを2秒以上押すと補正します。ただしトリガーレベルがずれます。今後のファームウェア改善に期待します。
- 動作確認は1KHz,3.3V(J2)の方形波で行います。プローブ較正をC4,C6で行います。
まとめ
- 正弦波120KHzまではトリガがかかりますが、それ以上はトリガがかかりません。実質的にこれが上限でしょう。
- 音声帯域(20Hzから20KHz)に割り切れば十分実用になります。
- 操作しずらいなど難点がありますが、価格を考慮すれば納得せざるを得ないでしょう。
- ほこりが気になるので、ケースへの収納が必要です。
- 秋月のポリカーボネート・ケース140がちょうどよい大きさです。
- 隙間にプローブを収納できます。
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