スイッチング電源のノイズ対策
(温故知新)故きを温ねて新しきを知るコーナー
はじめに
- ACアダプタはトランス方式からスイッチング方式に切り替わりました。
- トランス方式は負荷を接続したときに定格電圧になりますが、無負荷のときは出力電圧が高くなります。そのため電圧変動が大きいです。
- スイッチング電源は安定電圧、小型で効率も良い一方、スイッチングノイズを発生します。
- スイッチング周波数は可聴領域外(通常は40KHzから100KHz)であるものの、オーディオには不向きといわれています。
- そこで、スイッチングノイズ対策をし、オーディオでも利用できるようにします。
- 15V,0.8Aのスイッチング電源を例に紹介します。
外見
著作権と免責事項
- 個人利用に限定され、著作権者の許可なく商用利用できません。
- 直接間接に関わらず、使用によって生じたいかなる損害も筆者は責任を負いません。
- 仕様は予告なく変更されることがあります。
スイッチング電源の特徴
無負荷のリップルは大きい
- スイッチング電源に特有の現象があります。
- まず無負荷時のリップルが大きいことです。
- この例では無負荷時のリップルは40mVp-pです。
- 負荷時のリップルは小さくなります。
- 無負荷時のリップルが大きいからといって壊れているわけではありません。
無負荷時(AC capling 1ms/div)
負荷時(AC capling 1ms/div)
電波ノイズもある
- スイッチング電源本体から電波としてノイズを放射しています。
- 高周波ノイズであるため遮蔽するのがベストですが、電波強度は距離の二乗に反比例するので距離をとることでも対処できます。
- スイッチング電源本体と使用する機器本体を離す工夫が必要です。
- 計測時にプローブもスイッチング電源本体から離さないとノイズの影響を受けます。
- 電波ノイズをシールドしないと、プローブ線に手を触れただけでもノイズの影響を受けます。
スイッチングノイズ
- ひげのように見えるのがスイッチングノイズです。
- 出力電流が大きいとスイッチングノイズが大きくなります。
- 可聴周波数ではないため、人には聞こえません。
- オーディオ機器に利用してもノイズは載りますが、まったく聞こえません。
- D級アンプのスイッチング信号も出力から漏れますが、スピーカーで再生できる周波数ではないため人には聞こえません。
- しかし、気分のよいものではないので、フィルタで取り除きます。
- 周波数が高いため、3端子レギュレータでも取り除くことができません。
- 3端子レギュレータのリップル除去は低い周波数(100Hz以下の商用電源)で有効です。
60Ω負荷時(AC capling 1ms/div)
ノイズフィルタ回路図
- スイッチングノイズをフィルタします。
- ディファレンシャル・コイルによるフィルタです。
- ポイントはグランド側にもコイルを入れることです。
ノイズフィルタの効果
- 約32KHzにあるスイッチングノイズが取り除かれました。
- あわせて無負荷時のリップルも取り除かれます。
フィルタなしのノイズ周波数特性(full scale=1.5MHz)
フィルタありのノイズ周波数特性(full scale=1.5MHz)
- 低い周波数を見てみます。
- 商用電源ノイズ(50Hz)にはあまり効果がありません。
フィルタなしのノイズ周波数特性(full scale=1.5KHz)
フィルタありのノイズ周波数特性(full scale=1.5KHz)
電波ノイズ対策
- あとはスイッチング電源本体から放射される電波ノイズを対策すれば万全です。
- スイッチング電源本体をスナック菓子の袋でシールドすればOKです。
- スナック菓子の袋はアルミ製ですがプラスチック・フィルムで覆われているためショートの危険が少ないです。
- 精密電源としては不向きですが、オーディオ機器としては十分実用になるでしょう。
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