パワーアンプ(電力増幅器)とボルテージ・アンプ(電圧増幅器)の見分け方
- 2018-01-02 初版
- 2022-04-25 第2版 理想的な電力増幅器
アンプ
- パワーアンプとボルテージ・アンプの見分け方です。
- 入出力特性を測定することで見分けることができます。
- みなさんにもできます。
- ボルテージ・アンプは負荷抵抗が変化しても(入力が固定なら)「出力電圧」が変化しません。これが電圧増幅器の特性です。
- パワーアンプは負荷抵抗が変化しても(入力が固定なら)「出力電力」が変化しません。これが電力増幅器の特性です。
準備
- 抵抗8.2Ωと33Ωを用意します。耐電力は1Wで十分です。これは負荷抵抗です。
- 測定器としてテスターを用意します。交流電圧を測定します。
- ソフトウェアWaveGeneをダウンロードします。
- PCを正弦波発生器にします。サウンド・システムをインストールしている場合、イコライザを無効にします。測定の邪魔です。
- 正弦波発生器でアンプの入力電圧(正弦波)を固定します。例えば1Vrms(100Hz)とします。
- テスターの交流電圧は50Hzあるいは60Hzを想定しているため、近い100Hzを使います。1kHzを使うと誤差がでます。
- ※交流の正弦波を使い、実効値で測定します。実効値を使うことでオームの法則を利用できます。
- ※電圧=電流×抵抗
- ※電力=電圧×電流=電圧×電圧÷抵抗
- ※交流の測定は難しく、本当は積分値を計算しなければなりません。正弦波に限定すると簡単に実効値を測定できます。
測定方法
- ステップ1
- アンプの出力に負荷抵抗8.2Ωを接続し、ボリュームで出力電圧を1Vrmsにします。このときの出力電力は1Vrms*1Vrms/8.2ohm=0.12Wです。
- ステップ2
- ボリュームを動かさずに(入力電圧も固定)アンプの負荷抵抗を33Ωに変更し、出力電圧を測定します。
判定方法
- 負荷抵抗を変更(8.2Ωから33Ω)しても「出力電圧」が変わらなければボルテージ・アンプです。
- 負荷抵抗を変更(8.2Ωから33Ω)しても「出力電力」が変わらなければパワーアンプです。
- たとえば、33Ω負荷のとき出力電圧が1Vrms(電圧が同じ)なら、ボルテージ・アンプです。
- たとえば、33Ω負荷のとき出力電圧が2Vrms(電力=2Vrms*2Vrms/33ohm=0.12Wが同じ)なら、パワーアンプです。
インピーダンス
- スピーカーの公称インピーダンスは8Ωであっても、実際のインピーダンスは大きく変化します。
- 周波数によってインピーダンス(負荷抵抗)は変化します。
- インピーダンス(負荷抵抗)が変化しても、(入力が変化しなければ)出力電力が一定でなければなりません。
- 音は電力に比例するからです。(振動板の動き(=ほぼ音)はボイスコイルの仕事量に比例します。仕事量は電力に比例します。)
- (入力が一定にもかかわらず)出力電力が変化してしまったら、音が変化します。
- つまり(入力が一定にもかかわらず)周波数によって音量が変化したら困ります。
- だからパワーアンプはインピーダンス(負荷抵抗)が変化しても出力電力が変化してはいけません。
- これがパワーアンプの特徴です。
- この特徴を測定すれば、パワーアンプかボルテージ・アンプかを区別できます。
- ※これがスピーカーをパワーアンプ(電力増幅器)で駆動する理由です。
- ※昔からパワーアンプ(電力増幅器)を必要とする理由です。
- ※必要とするのはパワーアンプ(電力増幅器)であり、ボルテージ・アンプ(電圧増幅器)ではありません。
- ※これは私の考えではなく、科学的な根拠に基づく理由です。
実際の測定例
- 実際に測定してみました。
- 一般的なアンプと開発したGPA1の測定結果です。
- どちらがボルテージ・アンプ(電圧増幅器)でどちらがパワーアンプ(電力増幅器)か明白でしょう。
- スピーカーにパワー(電力)を供給するからパワーアンプ(電力増幅器)です。
出力電圧比較
種類 | 8.2Ω時 | 33Ω時 |
ボルテージ・アンプ(電圧増幅器) | 1Vrms | 1Vrms |
パワーアンプ(電力増幅器) | 1Vrms | 2Vrms |
出力電力比較
種類 | 8.2Ω時 | 33Ω時 |
ボルテージ・アンプ(電圧増幅器) | 0.12W | 0.03W |
パワーアンプ(電力増幅器) | 0.12W | 0.12W |
理想的な電力増幅器
- 正しい電圧増幅器と電力増幅器の特性例です。
- 入力と出力は負荷に影響されず比例します。
- しかも負荷に影響されません。
- 不正確な電圧増幅器と電力増幅器の特性例です。
- 入力と出力は比例していますが負荷に影響されます。
- 理想的な電力増幅器の特性例です。
- 入力固定なら出力は負荷に影響されません。されてはいけません。
- スピーカーの負荷は周波数によって変動します。
- 負荷の影響を受けると周波数によって出力が変動します。
- すると音色(高周波の混合割合)が変化します。
- だから負荷に影響されてはいけません。
- ※音は電力に比例します。電圧ではありません。
- ※必要としているのは電力増幅器です。
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