ヘッドホンアンプ
はじめに
- CMOSロジックを使ったヘッドホンアンプです。
- 74HCU04を使ったアンプです。
- NXP社(旧Philips Semiconductors)のデータシートを元にしています。
- 74HCU04はバッファを持たない特殊なCMOSロジック回路のため、アンプとして利用できます。
- Uの有り無しで大きな違いがあります。74HC04はアンプとして機能しません。
- CMOSロジックICですので、2Vから6Vの電源範囲で動作します。
- 詳細な解説をみかけないので、測定と解析を行いました。
- 駆動電流の大きいACシリーズの方が有利ですが、74ACU04を製造しているメーカはありません。
- 74AHCU04は製造されています。
著作権と免責事項
- 個人利用に限定され、著作権者の許可なく商用利用できません。
- 直接間接に関わらず、使用によって生じたいかなる損害も筆者は責任を負いません。
- 仕様は予告なく変更されることがあります。
原理
- NXPの74HCU04データシートに記載されているアンプ回路です。
- 74HCU04はバッファを持たず、電力増幅のプッシュプル構造をしています。
- そのためアンプとして機能します。
- 電圧増幅度Gvは次の式で表されます。大雑把な計算をするときはGv=R2/R1とします。
- R1,R2には正しく動作するための条件があります。
- 負荷抵抗ZLは10KΩ以上が推奨です。
- 出力電圧はVdd/2を中心に動作しますので、DCカットのためC2が必要になります。
- もちろんCMOSですので、使用しない入力ピンはプルアップかプルダウン処理します。
実験回路
- R1=10K、R2=10Kとして基本性能を測定します。
- 電圧増幅度Gv=-0.91です。マイナス符号は振幅が逆転(位相反転)することを意味します。
- もともとオープンループゲインが一般のアンプと比べて20と低いため、大きな電圧増幅度は望めません。
- ちょっとしたアンプが必要な用途に向いています。
- 電源範囲が2Vから6Vのため、電池駆動も可能です。
- 最終的にはヘッドホンアンプの利用を想定しています。
- ヘッドホンのインピーダンスは32Ω前後であるため、工夫が必要になります。
出力インピーダンス測定
- アンプ出力の駆動能力を確認するためです。
- アンプの出力インピーダンスが低いほど、駆動能力があります。
- ここでは、簡易的に1KHzでの出力インピーダンスを測定します。
- 周波数によって多少の変動はありますが、目安を知るだけですので簡易方式としました。
- 測定原理は簡単です。
- 可変抵抗なしの状態で、1KHzの交流出力電圧V0を測定しておきます。
- 可変抵抗を接続して、出力電圧がV0の半分になるように、可変抵抗を調整します。
- あとは可変抵抗を外して、その抵抗値VRを測定するだけです。
- オームの法則でアンプの出力インピーダンスR2=VRとわかります。
- 測定の結果、アンプの出力インピーダンスは203Ω@1KHzでした。負荷抵抗ZL=10K以上推奨となっていますが、随分低いようです。
- これは74HCU04のロジック一つの場合です。2つ併用すれば100Ω、4つ併用すれば50Ωになります。
- ヘッドホンのインピーダンスが32Ωですので、どうやら駆動できそうです。
ヘッドホン・アンプの設計
- 一般的にヘッドホン・アンプの増幅度は3(10dB)程度です。大きな増幅度は必要ありません。
- 電圧増幅度Gv=2.52(8dB)としました。
- ヘッドホンを駆動できるようにアンプの出力インピーダンスを低く設定する必要があります。
- ヘッドホン・アンプの目的は増幅度ではなく、ヘッドホンを駆動することです。どんなに高い電圧でも弱い力では駆動できません。
- 車のエンジンに例えるなら、回転数だけではなくトルクが必要です。
- 74HCU04のロジックを6つ併用すれば32Ωを下回り十分駆動できるでしょう。
- ステレオの場合、片チャンネルあたり6回路使用しますので、74HCU04が2つ必要になります。
- スピーカを駆動する場合には24併用すれば、8Ωを下回ります。
評価
- 周波数特性は非常に良好です。
- ヘッドホンを力強く駆動します。
- 下手なアンプよりいいでしょう。
- 問題は少々消費電流が大きいことです。Vdd=2Vで3mAですが、Vdd=3Vで20mAもあります。
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