外部アンテナの研究
はじめに
- ゲルマニウム・ラジオで子供から素朴な質問がありました。
- いい質問ですね。大人からはありませんでした。
- どうしてなのか疑問を持つことは知的な発見です。
- この精神を忘れないようにしましょう。
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素朴な疑問
- ゲルマニウム・ラジオは外部アンテナを接続しないと電波が弱いために聞こえません。
- 外部アンテナの接続を前提としなければなりません。
- ※中波の波長は1MHzなら300/1MHz=300mもあり、1/4波長アンテナでも75mにもなります。
- アンテナをつけたり、アンテナの長さを変えると同調周波数(放送局の受信位置)がずれます。
- なぜでしょうか?不思議ですよね。大人のみなさん答えられますか。
- この疑問に答えてみましょう。基礎理論を理解していないと答えられません。
- 少し難しい話をしますが、今わからなくても、将来数学や物理を勉強したときにもう一度見返してみましょう。
- ※厳密ではありませんが、大雑把にその原理を解説します。
同調周波数、共振周波数
- ラジオ受信機の同調回路は並列共振回路で構成されています。
- 並列共振回路に交流が加えられます。ラジオ放送の場合、空間を電磁波(電波)という形で交流が伝わります。
- 理論上の共振周波数fは合成抵抗Zから求めることができます。
- ところが現実には外部アンテナを取り付けると少し状況が変わります。
- 理想と現実に差があります。
- 外部アンテナを等価回路で示すことができます。
- ※厳密な等価回路ではありませんが、理屈を知る助けになります。現実には複雑なことが起こっているため正確な等価回路を書けません。
- 半波長ダイポール・アンテナを例としています。外部アンテナはダイポール・アンテナの片側を取り付けた状態に近いからです。
- グランド側にもアンテナを取り付ければダイポール・アンテナそのものです。
- ※半波長ダイポール・アンテナのインピーダンスは73+j43であり抵抗成分とインダクタ成分があります。
- アンテナにLやCは見当たりません。どこにあるのでしょうか。
- 実はアンテナ自体に微小ですがC成分やL成分が隠れて存在します。
- 長いアンテナ線ほどこうした成分を無視できなくなります。複雑な共振回路になります。
- ※アンテナ線を考慮してシミュレーションすると共振周波数に影響します。
- このようにして外部アンテナの影響で共振周波数がずれます。
- この外部アンテナの影響を小さくするためにC1を取り付けていたのです。
- もし、C1が十分小さければ、外部アンテナを無視できます。VCとL1だけで共振周波数が決まります。
- しかし、あまりC1を小さくするとアンテナとの結合も弱まるため、受信信号が小さくなります。
- 受信信号を通しながら、なおかつ共振周波数のずれを防止するためC1のバランスが大切です。
- 実際にはC1をある値で妥協しなければなりません。共振周波数のずれを完全には防止できません。
- ずれの原因は外部アンテナ自身がもつ隠れたC成分やL成分であったのです。
- 理想から理論上ずれていたのです。
- ではどうすれば改善できるでしょうか。
- C1を容量性結合と呼びます。
- 後の号で出てきますが、誘導性結合をすると改善できます。
- C1を取り払い、L1に外部アンテナの線を数回巻き付けます。細いホルマル線を使うと良いでしょう。
- ただし、疎結合のため(結合の度合いが小さい)、受信信号があまり伝わりません。つまり音が小さいです。
- 物理的にサイズが小さいため、結合度合いを大きくできません。
- ホルマル線を100回巻き付ければ蜜結合になるかもしれません。
- 原因を究明し、どうしたら改善できるか、その能力が必要です。
- 今後の人材として工夫や発想を思いつける能力を求められます。揚げ足をとる人材ではありません。
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