鉛蓄電池についてまとめることにしました。自動車のバッテリを代表に広く使われています。 鉛蓄電池は内部抵抗が小さいことから、大電流に向いています。
一セルあたりの構造です。希硫酸の濃度は約35%です。硫酸の濃度が低いものを希硫酸、高いものを濃硫酸と分類します。 これは濃度によって化学的な性質が異なるためです。
一般名称 一次/二次 公称電圧 正極 負極 電解液 備考 鉛蓄電池 二次 2.1V 二酸化鉛(PbO2) 鉛(Pb) 希硫酸(H2SO4) 通常は3セルや6セルを組み合わせて6Vや12Vとする
化学反応式希硫酸の比重を調べることで充電率を知ることができます。
充放電 正極 負極 備考 放電 PbO2+4H++SO42-+2e- -> PbSO4+2H2O Pb+SO42- -> PbSO4+2e- H2Oを生じるため、希硫酸の濃度が低下する 充電 PbSO4+2H2O -> PbO2+4H++SO42- PbSO4+2e- -> Pb+SO42- H2Oを分解するため、希硫酸の濃度が上昇する
上記をまとめた化学反応式放電によって、硫酸鉛(PbSO4)も生成されます。
正極 + 電解液 + 負極 反応方向 正極 + 電解液 + 負極 PbO2 + 2H2SO4 + Pb <-充電/放電-> PbSO4 + 2H2O + PbSO4
鉛蓄電池の劣化は物理的な破損を除き、放電時に生じる硫酸鉛(PbSO4)が徐々に極板上に結晶し始めるためです。 この現象はサルフェーション(白色硫酸鉛化)と呼ばれます。硫酸鉛(PbSO4)は電気を通しにくいため、 充電時に分解されにくく、徐々に鉛蓄電池の内部抵抗が増えてやがて寿命を迎えます。
このため、鉛蓄電池は満充電状態での保存が望ましく、寿命を延ばすことができます。 逆に、バッテリを上げたりなど使い切るような使い方をすると(これを深放電と呼ぶ)、寿命が短くなります。 一般的に寿命は2、3年といわれています。
最近では深放電(容量の80%程度)に強いディープサイクルバッテリも存在します。 一般的な鉛蓄電池は充電率75%程度(放電率25%)に下がったところで充電するようにしたほうがいいでしょう。 自動車のバッテリは運転時、常に定電圧充電されているため、比較的深放電しにくいように設計されています。 通常、一ヶ月程度乗らなくてもバッテリ上がりしないように設計されています。 (自動車は時計やキーレスエントリなどを動作させるためキーを抜いていても常時微弱電流が流れています。 これを暗電流と呼びます。概ね10mA前後です。)
最近、電解液に希硫酸を使用しないシリコンバッテリというものが登場しました。 希硫酸を使用しないことからサルフェーションを起こさず超寿命を売りにしています。 一方で問題も抱えています。高温で電解ゲルが溶け出して液状化し不良になります。 逆に低温では電解ゲルが電極と接触不良を起こすことが知られています。
- 国産の自動車用バッテリを例にします。容量は5時間率容量[Ah]であらわされます。
- これは容量の5分の1の電流を放電し(25℃)、終止電圧10.5Vまで放電できる時間と電流の積です。
- 性能ランクは容量を明確に示すものではありませんが、概ね以下の通りです。
JIS型式名 容量[Ah] サイズ(長さx幅x高さmm) 28A19L/28A19R 21 187x127x162 30A19L/30A19R 21 187x127x162 32A19L/32A19R 24 187x127x162 34A19L/34A19R 24 187x127x162
JIS型式名 容量[Ah] サイズ(長さx幅x高さmm) 28B17L/28B17R 24 166x127x202 34B17L/34B17R 27 167x127x202 34B19L/34B19R 27 186x127x202 38B19L/38B19R 28 186x127x202 40B19L/40B19R 28 186x127x202 42B19L/42B19R 30 186x127x202 44B19L/44B19R 32 187x127x202 46B24L/46B24R 36 238x128x202 50B24L/50B24R 36 238x128x202 55B24L/55B24R 36 238x128x202 65B24L/65B24R 40 238x128x202
JIS型式名 容量[Ah] サイズ(長さx幅x高さmm) 50D20L/50D20R 40 202x173x202 55D23L/55D23R 48 232x173x202 60D23L/60D23R 48 232x173x202 65D23L/65D23R 52 232x173x202 70D23L/70D23R 52 232x173x202 75D23L/75D23R 52 232x173x202 80D23L/80D23R 52 232x173x202 55D26L/55D26R 48 260x173x202 60D26L/60D26R 48 260x173x202 65D26L/65D26R 52 260x173x202 75D26L/75D26R 52 260x173x202 80D26L/80D26R 55 260x173x202 85D26L/85D26R 55 260x173x202 90D26L/90D26R 55 260x173x202 65D31L/65D31R 52 305x173x202 75D31L/75D31R 52 305x173x202 85D31L/85D31R 55 305x173x202 95D31L/95D31R 64 305x173x202 100D31L/100D31R 64 305x173x202 105D31L/105D31R 64 305x173x202 115D31L/115D31R 72 305x173x202
JIS型式の見方(38B19Lの場合)
38 性能ランク、数値が大きいほど始動性能がよく容量が大きい
性能ランク=Sqrt(CCA x RC)/2.8, CCA:定格コールドクランキング電流 [A], RC:定格リザーブキャパシティ[分]B サイズ区分、幅と高さを規定、A-Hまである 19 長さをcm L 端子の位置、LとR 実際のサイズはメーカによって数ミリの誤差があります。
記号 幅[mm] 高さ[mm] A 127 162 B 127 203 C 135 207 D 175 204 E 176 213 F 182 213 G 222 213 H 278 220
電解液の比重を測定することで充電率を知ることができます。専用の比重計が必要になります。
また開放電圧(無負荷で1時間以上放置した状態)からも充電率を知ることができます。
この方法が簡単です。ただし寿命を迎えた場合あまり信頼性がありません。
エンジンを切った直後はそれまでオルタネータによる充電が行われていたため、高い電圧を示します。しばらく放置してから測定する必要があります。
20℃の充電率開放電圧[V]=(比重+0.84)x6セル
充電率 比重 開放電圧[V] 100% 1.280 12.72 75% 1.235 12.45 50% 1.190 12.18 25% 1.145 11.91 0% 1.100 11.64
比重は温度に左右されます。 比重の温度換算式 S20=St+0.0007(t-20)
温度も考慮した充電率=(V/6-1.94+0.0007(t-20))/(0.18)x100
鉛蓄電池の充電方法は定電圧方式のため比較的簡単です。 通常充電は公称容量の1/10以下の電流(たとえば28Ahなら2.8A)になるよう、13.8Vから14.5Vの間で定電圧を掛けるだけです。 充電には10時間以上必要になります。充電が完了すると電流がほぼ流れなくなります。 そのため、この方法では充電後放置したままにすることができます。
鉛蓄電池の専用充電器は初期電流が公称容量の1/10以下の電流になるように制限し、定電圧を掛けるようにしています。
鉛蓄電池の充電イメージ(28Ah, 初期電流を2.8Aに制限、定電圧=13.8V)
あまり急激な電流を流すとH2Oが電気分解し、水素を発生させます。 電極に気体が発生すると電極の接触面積が減ることから充電効率が落ちます。
特に密閉型のMF鉛蓄電池(MF:Maintenance Free)の急速充電は危険です。十分な制御が必要です。
(C)2008 All rights reserved by Einstein.内部抵抗は開放電圧と負荷抵抗を接続したときの電圧降下から求めることができます。
- 鉛蓄電池は寿命を迎えると内部抵抗が上がり、電池としての能力が下がります。
- 一般的に正常な鉛蓄電池の内部抵抗は0.01Ω以下であることが知られています。
- つまり内部抵抗を測定することである程度の寿命を知ることができます。
- スターターの電流は大体150A前後です。
- 内部抵抗が0.01Ωとすると電圧降下は1.5Vですから出力電圧は12.6V-1.5V=11.1Vです。
- 終止電圧の10.5V以上あるので、正常と判断できます。
- 一つの目安ですが、内部抵抗が0.02Ω以上で寿命と判断することができます。
内部抵抗の測定原理(オームの法則を利用して内部抵抗を求める)
内部抵抗の測定方法負荷抵抗の接続は発熱を伴うため、短時間で済ませてください。
- 開放電圧を測定(無負荷)。例、12.60V
- 負荷抵抗3Ω(5%, 耐電力80W)を接続したときの電圧降下を測定。例、12.60V-12.57V=0.03V
- 内部抵抗を計算(内部抵抗=電圧降下 x 負荷抵抗 / 負荷電圧)。例、0.03V x 3Ω / 12.57 = 0.007Ω
実際に寿命を迎えたバッテリの内部抵抗を測定してみたところ、0.26Ωありました。