モバイルバッテリの容量表記
- 2017-03-08 初版
- 2019-01-27 第2版
はじめに
- 最近気が付いたのですが、モバイルバッテリの容量表記は消費者を誤解させています。
- 実容量が表示容量よりも少ないことを経験的に感じていましたが、その原因を解説します。
- 自動車でも公称燃費と実燃費が異なることが知られており、モバイルバッテリの容量表記はさらに消費者の誤解を招く表示です。
著作権と免責事項
- 個人利用に限定され、著作権者の許可なく商用利用できません。
- 直接間接に関わらず、使用によって生じたいかなる損害も筆者は責任を負いません。
誤解の元
- まず、モバイルバッテリの容量表記は「使用しているセルの合計容量(=内蔵電池容量)」です。
- てっきり、中身をブラックボックスとして、バッテリとしての「公称容量」を表記しているものと勘違いしていました。
- ほとんどの人はそう思っているはずです。
- 例えば、一般的な単三ニッケル水素電池の公称容量は2000mAhです。概ねそれくらいの容量があります。
- モバイルバッテリも同じような「公称容量」を表示していると思っていました。
- ところが「セルの容量」でした。
- これでは消費者は正しい比較や見積もりをできません。
違いを解説
- 「内蔵セルの容量」と本来知りたい「モバイルバッテリとしての公称容量」は別物です。
- 何が異なるのかを解説します。
- 内蔵セルはリチウムイオン電池やリチウムイオンポリマー電池であり、公称電圧は3.7Vです。
- 一方でモバイルバッテリの公称電圧はUSB電圧の5Vです。
- この出力電圧を調整するために昇圧型のDCDCコンバータを内蔵しています。
- 本来はこの電圧差を考慮した公称容量を知りたいのです。
- DCDCコンバータの電力変換効率を100%と仮定した数値です。
- 例えば、3.7Vで1000mAhのセルを使用した場合、5V出力すると3.7V÷5V×1000mAh=740mAhが理論上の公称容量です。
- ※実際のDCDCコンバータの変換効率は80%から90%の範囲にあります。
- これが消費者の知りたい公称容量であり、使用時間の見積もりに利用できます。
- 例えば、USB電源チェッカーで平均消費電流が300mAなら、電池寿命は740mAh÷300mA=2.5時間と見積もれます。
- ※もっと正確には変換効率をさらに考慮します。
- これをセル容量で見積もると、大きな誤差を生じます。
- なぜか、容量表示は「公称容量」ではなく「セル容量」です。
- 業界による表示規定がないために、嘘ではないのものの誤解を招く表示となっています。
- ※確かに仕様には「公称容量」とは書いていません。
- 消費者庁から指導が入る前に、統一していただきたい。
- かつて、LED電球の明るさが不明確であり消費者を誤解させていました。現在はルーメンに統一されました。
まとめ
- モバイルバッテリの容量は「公称容量」ではなく「セル容量」を表記しています。
- 公称容量に換算するには、まず74%換算(=3.7V÷5V)します。
- さらに、実容量はDCDCコンバータの変換率80%換算します。
- つまり、セル容量の0.74x0.8=0.592=59.2%が実容量です。
- 実容量とはモバイルバッテリとして5V出力したときの電流容量を示しています。
- 実容量を測定してみると、概ねあいます。
- ※DCDCコンバータの変換効率は一定ではなく、電流によって変動します。
- 結論としてモバイルバッテリの容量表記の約60%が実容量と考えればよい。
- 公称容量として、最低容量保証値である実容量を表記すれば良いだけです。
- なぜ、こうした簡単でわかりやすい解説がないのでしょうね。
電気用品安全法(PSE)の対象
- 平成20年11月20日施行
- リチウムイオン蓄電池の規制対象化に関するFAQ
- 体積エネルギー密度400Wh/L以上の「リチウムイオン蓄電池」が電気用品安全法の対象になりました。
- しかし「モバイルバッテリー」は対象となりませんでした。
- ※体積エネルギー密度の小さい「リチウムイオン蓄電池」は対象になりません。
- 平成31年2月1日施行
- モバイルバッテリーに関するFAQ
- 体積エネルギー密度400Wh/L以上の「モバイルバッテリー」が電気用品安全法の対象になりました。
- PSEマークを記載したモバイルバッテリー以外は製造、輸入、販売ができなくなります。
- ※体積エネルギー密度の小さい「モバイルバッテリー」は対象になりません。
リチウムイオン電池の航空機制限
- リチウムイオン電池を内蔵した電子機器(デジタルカメラ、スマートフォン、携帯電話、パソコン)の航空機制限
- ワット時定格量が160Wh以下なら機内持ち込みOK、預け入れは禁止
- リチウムイオン電池(モバイルバッテリー)の航空機制限
- ワット時定格量が100Wh以下なら(2個まで)機内持ち込みOK、預け入れは禁止
- ワット時定格量
- Wh = 3.7(電圧) × mAh(容量) ÷ 1000
- 10000mAhのモバイルバッテリのワット時定格量は 3.7V × 10000mAh ÷ 1000 = 37Wh
- ワット時定格量Whの表示がないと没収されることがあります。
©2017-2019 All rights reserved by Y.Onodera.