- これは1985年に製作したポケットコンピュータです。
- 当時はまだコンピュータというものが世の中に登場しはじめたころです。
- NECのPC-8001の発売が1979年、PC-9801の発売が1982年です。
- パソコンがとても高価な時代であり、とても購入できるものではありませんでした。
- PC-8001の定価は¥168,000であり、当時の大卒初任給¥112,525をはるかに超えていました。
- 買えないなら作ってしまえと、右も左もわからぬまま行動を開始しました。当時はCPUって何?ROMって何?RAMって何?という学生でした。
- 今思えばなんとも無謀な挑戦です。
- 電気の基礎、トランジスタの仕組みから論理回路図まで独学で習得し、やっとの思いでポケットコンピュータを完成させました。
- 当時教科書など存在せず、ましてインターネットどころか通信ネットワークもなく、葉書でメーカーにチップのデータシートを請求して取り寄せていました。
- とにかく最先端であったコンピュータの情報が乏しく、わからないことは大きな本屋で数少ない専門書を立ち読みしました。
- それでも解決しないことが多く、わからないことだらけでした。
- はじめはデータシートに書いてあることさえ理解できず、完成までに数年を費やしましたが、このときの経験は今でも活かされています。
- 無から有を作り出す、ものづくりの原点であったように思います。
CPU uPD70008C(4MHzクロック) 表示 グラフィックLCD(120 x 32ドット) メモリ ROM=32KB、SRAM=32KB 拡張I/O uPD71055、8ビットx3 拡張モジュール カセット・インターフェース、ROM書き込み装置 電源 100mA、単三電池x4本
- 当時のCPUといえば8ビットのZ80Aの時代で、このサードパーティ(CMOS版)であるuPD70008C(4MHzクロック)を採用しました。
- 周辺装置もやっと世の中に出始めたCMOSを利用することで大幅な消費電力低減を図ることができ、電池駆動(単三4本)が可能となりました(100mA以下です)。
- TTL全盛期の当時としては画期的なことです。
- メモリはROM=32KB、SRAM=32KBの合計64KBです。64KBがZ80Aのフル・メモリ空間です。
- 表示にはグラフィックLCDを利用し、キーボードにはタクトスイッチを使いました。
- メモリ空間が小さいためOSを搭載することができず、独自のROMを開発しました。ROMを消去する紫外線装置をもっていなかったので、日光浴させて消していました。
- (当時のOSといえばCP/Mしかありませんでした。MS-DOSがやっと登場してきたころです。)
- 外部記憶装置として、拡張I/O経由でカセット・インターフェースを搭載し、プログラムを入れ替えることができます。
当時はCADなんてものは存在せず、手書きです。
電源周り
ピン
基板設計
クロック・タイミング・チャート設計
独自のモニター用コマンドは次の通りです。
- ソフトウェアも同じくすべて手書きです。膨大なページ数になりました。開発環境は紙と鉛筆です。
- ハンドアセンブルしてROMに書き込んではテストを繰り返すということをしました。おかげでZ80Aの機械語が読めるようになりました。
- 周辺装置にROM書き込み器を取り付けることができるため、ROMを交互に交換します。
D <address> ダンプリスト E <行番号> テキストエディタ A <address> アセンブル(未完成) L <address> 逆アセンブル(未完成) H <address> ヘキサ入力 B <address> ブレークポイント設定 C ブレークポイントクリア G <address> 実行 F <from add> <by add> <data> バイト充填 M <from add> <by add> <to add> バイト移動 R データリード W <from add> <by add> データライトRAM上で動作確認をしてはROM化してコマンドを増やしていきました。
プログラムはすべてアセンブリ言語です。
モニタープログラムの一部
3段重ね
最新技術で2枚の基板を1枚に集約しました。©2010-2011 All rights reserved by Y.Onodera.
外部オプションです。ROMライターとオーディオ・インタフェースです。
このように接続して使います。