ガイガーカウンタ
ガイガー・ミュラー計数管(Geiger Muller Counter Tube)
1925年ドイツの物理学者Johannes Wilhelm Geiger と学生であったWalter Muller によって発明された放射線検出器。略してGM計数管ともいう。
円筒状金属(陰極)の中心に芯線(陽極)を配置したもので、高電圧を必要とするが、放射線をひとつひとつ計測することができる。
放射線の強度(速度、エネルギー)は測定できない(この用途には同じ構造の比例計数管を使う)。量(数)を測定するものである。
比較的感度を高くできる。
アルファ線とベータ線の検出に向いている。
ガンマ線も検出できるが、その検出確率は数%程度といわれている。γ線の検出率が低いことを前提にγ線感度で較正される。
ガイガー・ミュラー計数管は0.1気圧に減圧され、不活性ガス(Ar, He)と
連続放電阻害用として少量のアルコールあるいはハロゲンガス(臭素)が充填されている。
電圧は 500V から 700V必要。この計測に適した電圧域をプラトー電圧(Plateau)という。プラトー電圧にあっては検出数があまり変化しない。
ガイガー・ミュラー計数管の動作原理
- 放射線(α、β、γ)が入射する。
- ガス分子(不活性ガス)に衝突し、ガスを電離する(イオン化)。
- 発生した電子が高電界で加速される。
- 加速電子がさらにガスに衝突し、励起される。
- 励起されたガスが基底状態に戻る際、紫外線を発生する。
- 紫外線がガスを電離し、電子なだれを引き起こす。
- 電子なだれが陽極に達し、パルスとして検出される。
- 一方でプラスイオンガスは電界を低下させる。
- これにより電子なだれは終息していく。
- プラスイオンガスは陰極へと移動する(分子であるため移動には時間がかかる)。
- 陰極に到達して電流が流れ、電子なだれを助長する。
- このままでは電子なだれがとまらない。そこで放電阻害ガスを入れておく。
- 放電阻害ガスがプラス電荷を受け取る。
- 放電阻害ガスが陰極に到達するが、このとき電子なだれを助長しない。
- 放電阻害ガスは分子に戻る。
ガスのW値
- α線、β線は電荷をもち、不活性ガスを直接的に電離する。
- 1対のイオンと電子へ電離するために必要な平均エネルギーをW値と呼ぶ。
- W値は第一イオン化エネルギーのおよそ2倍である。
- 単位はeV=電子ボルト
気体 | α線によるW値 | β線によるW値 |
He | 42.7 | 42.3 |
N2 | 36.6 | 34.9 |
O2 | 32.5 | 30.9 |
空気 | 35.5 | 34.0 |
放射性核種から放出されるエネルギー範囲
- 条件を整えれば、ガスのW値を超えることができ、放射線を検出することができる。
- α線、β線に関しては不活性ガスを直接的に電離するので検出率が高い。
- 一方でγ線に関しては不活性ガスを間接的に電離するので検出率が低いといわれている。γ線は透過力が高いため検出確率は低い。
- 例えば、γ線がたまに不活性ガスやGM管の金属に衝突すると光電効果やコンプトン効果でβ線を誘発するので、間接的に検出される。
α線 | 3MeVから8MeV程度 |
β線 | 10keVから5MeV程度 |
γ線 | 5keVから4MeV程度 |
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