ガイガーカウンタ
自然放射線
実際に放射線を測定してみる。
入手が容易で安全な試料は高血圧向けの食事療法に用いられる減塩である。
これは重量配分で 塩化ナトリウム 50% + 塩化カリウム 50% からなり、スーパーで数百円で売られている。
塩化ナトリウム(NaCl)の採り過ぎを防ぐために、半分が塩化カリウム(KCl)に置きえられた減塩である。
(具体的な商品名は出さない。)
自然界におけるカリウムの0.0117% は放射性同位元素の40Kである。40Kはベータ線を放出する。
原子量から重量計算をしてみるとこの減塩100gあたり、3mg の40Kを含む。
比較のために KCl を含んでいない通常の塩(NaCl 99%) も用意した。
準備
- ライターのガスを空気ガイガー・ミュラー計数管に適量いれる。ブタンガスは空気より重たい(空気:ブタン=1.00:2.08)ので注ぐように入れる。約3秒ほどいれる。言うまでもないがブタンガスは可燃ガスであるので、引火しないように注意。
- バックグランドを計測する。これを基準として相対的な放射線量を測定する。
- 試料を測定しやすい大きさにラップで包む。概ね親指ぐらいの大きさとする。ベータ線はラップを通過する。
測定のコツ
- ライターガスは時間とともに少しずつ抜けてしまう。どのくらいで抜けるかは、空気ガイガーミュラー管の密閉度に依存する。
- 電源投入後、ガイガーカウンタの印加電圧が安定するまで待つ。バックグランドが安定するまで待ってから測定を開始すること。
- 測定しない試料はガイガーカウンタから数メートル離しておくこと。そうしないとバックグランドが下がらない。
ベータ線は空気中を分子に衝突しながら、ジグザクに数メートル進む。この現象は霧箱を使うと観測できる。
- 測定は誤差を伴うため、測定値が安定してから、数回サンプルして平均するとよい。
- 試料を何重にもラップに包まないこと。
測定結果
測定対象 | 1回目[cpm] | 2回目[cpm] | 平均[cpm] |
バックグランド | 11 | 9 | 10 |
減塩(NaCl+KCl) | 25 | 21 | 23 |
塩(NaCl) | 9 | 13 | 11 |
グロー点灯管 | 2111 | 2173 | 2142 |
考察
- カリウムを含む減塩はバックグランドに比べて約2倍のカウントを計測できた。
- 塩NaCl(99%)は天然塩であるため、バックグランドよりわずかに大きい値を示すが減塩とは明らかに異なる。
- 本当にベータ線を測定しているか確認のために、古いグロー点灯管を測定してみたところ高い値を示した。
古いグロー管にはプロメチウム147が使われており、ベータ線を放出している。
なお最近のグロー点灯管は放射線元素に代わって長残光性夜光塗料が使われており、放射線を出さない。
- このほか比較的安全に入手できる試料としては温泉の湯の花がある。いわゆる天然温泉の元である。
ラジウム温泉などの湯の花には放射性元素が微量含まれていることが知られている。
ただし、最近は人工的な湯の花が出回っており、温泉街においても本物の湯の花の入手は困難である。
測定してみると、あらゆる試料にわずかではあるが、放射線が認められる。むしろ放射線のないものを見つけることが困難なくらいである。
カリウムを含む食品はみな多かれ少なかれ放射線を放出している。
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