ガイガー・ミュラー管を入手できましたので、PIC で制作してみました。
Images SI Inc
マイカ窓でα、β、γ線を検出できます。型番が不明ですが、寸法、特性が同等なことからsaint-gobain社の1504WあるいはLND社の712と思われます。
価格は $99.95 ですが、このほかに送料が$20くらいかかります。毎年値上がりしています。
互換製品
LND社 LND 712 CANBERRA社 T2112 CENTRONIC社 ZP1405 SAINT-GOBAIN社 1504-W
- 個人利用に限定され、著作権者の許可なく商用利用できません。
- 直接間接に関わらず、使用によって生じたいかなる損害も著作権者は責任を負いません。
- 仕様は予告なく変更されることがあります。
寸法inch(mm)
セシウムCs137によるエネルギーの相対感度。
セシウムCs137による線量[mR/h]とカウント率。
電気特性
機械特性
最大始動電圧[vols] 325 推奨動作電圧[volts] 500 動作電圧[volts] 450-650 最小不感時間[u sec] 90 最大プラトー傾斜[% / 100 volts] 6 推奨アノード抵抗[M ohms] 10 ガンマ感度 Cs137 [cps / mR / hr] 18 遮蔽時の最大バックグラント 50 mmpB = 3 mmAI [cpm] 10 容量[pF] 3 重量[grams] 8.0
実効長[inch / mm] 1.53 / 39.0 実効直径[inch / mm] 0.354 / 9.0 カソード材質 446 Stainless Steel カソード膜圧[inch / mm] 0.010 / 0.25 マイカ窓重量密度[mg / cm2] 1.5-2.0 有効窓直径[inch / mm] 0.354 / 9.0 充填ガス Ne / Ar + Halogen 動作温度レンジ[C] -40 to +75 コネクタ形状 Pin
使用電池 006P 9V 消費電流 2.8mA 電池寿命 アルカリ電池485mAH/2.8mA=173hour 最大計測[CPS] 65536、ただし10000cpsで飽和(上限) 最大計測[CPM] 65536 計測レンジ 0.000 - 9.999uSv/h(1分間隔)
10.00 - 99.99uSv/h(1分間隔)
100.0 - 999.9uSv/h(1秒間隔)
1.000 - 9.999mSv/h(1秒間隔)
ただし5.555mSv/hで飽和(上限)重量[g] 120
改善事項(2011-05-22)
- ST-14は特性のばらつきが大きいため、別途公開しているインダクタの高電圧回路をお勧めします(無調整です)。
- ST-14を利用する場合、高電圧測定とPWM調整が個別に必要です。テスターでは正確に測定できません。
- 検出パルスの取り込みを改善しました。
- 検出パルスが大きすぎるため、R10の100Kを75Kにしました。
- 高電圧のノイズをフィルタリングするため、C3の位置を変更しました。
- GM管は電子なだれを利用するため、比較的同じような検出パルスになります。これをエネルギー分解能が低いといいます。
- しかしながら、検出パルスはやはり電圧の大小があります。
- またパルスが隣接することも稀にあります。
- これらの取りこぼしを防ぐ必要があります。
- 電源電圧をモニタリングします。
- GM管駆動電圧は500Vです。
- 本来であれば、整流ダイオードはファーストリカバリを使用すべきですが、設計当時、耐圧600V以上のファーストリカバリを入手困難でした。
- その代わり、十分な実験に基づき工夫をしています。
- 1N4007を単純にファーストリカバリに変更してしまうと問題が発生するかもしれません。
- 非常に苦労した部分であり、ここが肝になるため、詳細は企業秘密です。
値 数 備考 6.7K 1 R1 カーボン皮膜抵抗1/4W 4.7K 1 R2 カーボン皮膜抵抗1/4W 2K 1 R3 カーボン皮膜抵抗1/4W 100K 2 R4,R6 カーボン皮膜抵抗1/4W 200K 1 R5 カーボン皮膜抵抗1/4W 4.7M 1 R7 カーボン皮膜抵抗1/4W 47K 1 R8 カーボン皮膜抵抗1/4W 75K 1 R10 カーボン皮膜抵抗1/4W 1000pF 1 C1 セラミックコンデンサ(耐圧1KV)、鈴商 100uF 1 C2 縦型電解コンデンサ(耐圧25V) 470pF 1 C3 セラミックコンデンサ 1N4007 1 D1 ダイオード(耐圧1KV)、秋月 16F88 1 U1 PIC、秋月 LMC662 1 U2 CMOSオペアンプ、秋月 XC6202P502 1 U3 5V三端子レギュレータ、秋月 2SC1815GR 2 Q1,Q2 NPNトランジスタ、秋月 SC1602B 1 LCD1 液晶16桁x2行、秋月 BZ 1 BZ 圧電素子 GMT-01 1 GM ガイガー・ミュラー管、LND-712 ST14 1 T1 サンスイ小型トランス、千石電商
GeigerPCB.zip
プログラムの説明
- ファームウェアをHI-TECH Cで書き換えました。(2011-03-21)
- 自動レンジ切り替え表示にしました。(2011-03-21)
- GM管駆動電圧はPWM機能を使って発生させます。
- 電源電圧をA/D変換します。電池寿命の目安になります。5.5V以下で交換します。
- クロックは内部発振1MHzと低めにし、消費電力を抑えています。
- GM管の感度がわかっていますので、CPMから uSv/h に変換します(1R≒10mGy近似)。
最終的な採用値はCPM÷120=CPM×0.00833[uSv/h]としました。理由は以下のとおりです。
- 18 cps/(mR/h) = 1.8 cps/(uSv/h) = 108cpm/(uSv/h)
- uSv/h = CPM / 108 = CPM x 0.00926
- 1[レントゲンR]=8.77[ミリグレイmGy]としました。
- GM管はγ線のエネルギーによっても相対的な感度が若干異なります。
- 例えば、校正用放射線源のセシウム137とコバルト60ではγ線エネルギーが異なるため、どちらで較正するかによっても誤差を伴います。
- その中で、この値が中心的な値と思われるからです。
1ミリ=1000マイクロです。
■シーベルトとグレイ■CPMとシーベルト
- 1[シーベルトSv]=放射線荷重係数WR × [グレイGy]
- ただし、α線の放射線荷重係数WR=20
- ただし、β線とγ線の放射線荷重係数WR=1
- α線は空気中を数センチしか飛ばないので検出部との距離が短くないと計測できません。
- そのため外部被曝を考えるとき(シーベルト換算するとき)α線を無視します。
- 内部被曝を考えるときはα線を考慮しなければなりません。
- β線は空気中を数メートル飛びます。さらにγ線の光電効果とコンプトン効果によりβ線を誘発します。
- γ線は光の一種ですので比較的遠くまで到達します。強さは距離の二乗に反比例します。
- このように外部被曝を考えるときはβ線とγ線が支配的になります。
- 1[シーベルトSv]=1[グレイGy]、(外部被曝としてβ線とγ線を考慮)
■換算誤差
- ガイガーミュラー管のγ線感度がわかっていると、CPM(1分間のカウント数)からシーベルト換算することができます。
- CPM(1分間のカウント数)=CPS(1秒間のカウント数)×60
- LND712 のγ線感度 18cps/(mR/h)(データシート値)
- これは1秒間に18カウントすると1mR/hという意味です。
- あるいは1分間に18×60=1080カウントすると1mR/hという意味です。
- また一般的に計算を容易にするため、次の近似式が用いられます。
- 1[レントゲンR]=8.77[ミリグレイmGy]≒10[ミリグレイmGy]
- つまり1[レントゲンR]≒10[ミリグレイmGy]=10[ミリシーベルトmSv]
- これを基に感度の単位を換算します。
- 18cps/(mR/h) = 1.8cps/(uSv/h) = 108cpm/(uSv/h)
- これは1分間に108カウントすると1uSv/hという意味です。
- 一般的にLND712で約100cpmで1uSv/hといわれているのはこのためです。
- CPM÷108=CPM×0.00926[uSv/h]
■0.00233
- シーベルト換算するときα線を無視したりレントゲンRを近似的に扱っています。
- このため、±15%程度の換算誤差があります。
- 1[レントゲンR]=8.77[ミリグレイmGy]として再計算すると
- CPM÷123=CPM×0.00812[uSv/h]
- 20cps/(mR/h) = 2cps/(uSv/h) = 120cpm/(uSv/h) から120cpmを1uSv/h換算することもあるようです。
- CPM÷120=CPM×0.00833[uSv/h]
- さらに1[レントゲンR]=8.77[ミリグレイmGy]として再計算すると
- CPM÷137=CPM×0.00730[uSv/h]
- いずれも誤差の範囲といえます。
- なお厳密な放射線測定器は校正用線源を使い、定期的に校正する必要があります。
- γ線感度は使用する校正用線源によっても若干の差があります。60Coと137Csがよく用いられます。
- 両者の放出するγ線のエネルギーが異なるためです。
■LND712の感度
- LND712のγ線感度で0.00233という係数が一人歩きしているようです。
- もともとツイッター上で質問していた内容が広まってしまったようです。
- 数値を検証するために、引用します。
---
sparkfunConversion from CPM for LND-712 ( http://bit.ly/hOQQX5 ):
1000CPS ≒ 0.14mGy/h <> 60000CPM ≒ 140μGy/h <> 1CPM ≒ 0.00233μGy/h
Is that right?
---- 残念ながら、これは誤りです。単純に対数グラフ(http://bit.ly/hOQQX5)の読み方を誤っており、正解は次の通りです。
- 1000CPS ≒ 0.07R/h = 0.614mGy/h <> 60000CPM ≒ 614uGy/h <> 1CPM ≒ 0.010uGy/h
- X軸を左に9,8,7と数えなければいけないところ、逆に1,2,3と数えてしまったためでしょう。
- さらにR/hとmGy/hの軸がずれていることに気づいていません。1R/h=8.77mGy/hです。
- 0.010(uSv/h)/cpmは一般的にLND712で100cpmで1uSv/hといわれている値です。
- LND712のγ線感度がたくさんあり、どれが正しいのかという問い合わせがあります。
CPM÷108=CPM×0.00926[uSv/h]、(60Co感度,1R≒10mGy近似)
CPM÷123=CPM×0.00812[uSv/h]、(60Co感度,1R=8.77mGy)
CPM÷120=CPM×0.00833[uSv/h]、(137Cs感度,1R≒10mGy近似)
CPM÷137=CPM×0.00730[uSv/h]、(137Cs感度,1R=8.77mGy)
- 結論からいうとどれも正しいです。
- γ線のエネルギーによりGM管の感度が異なります。エネルギーの高い放射線は波長が短くなります。
放射性核種から放出されるエネルギー範囲
γ線のエネルギーは3桁もの広い幅があります。広範囲にわたるため、測定誤差が大きいものになります。
α線 3MeVから8MeV程度 β線 10keVから5MeV程度 γ線 5keVから4MeV程度
- そのため、上記はどれも誤差の範囲であり、正しく測定したとしても±50%前後の誤差があると考えなければなりません。
- 測定方法を誤るともっと大きな誤差を伴います。
- γ線感度の較正には60Coか137Csが使われます。
γ線エネルギー137Csのような比較的高いエネルギーレベルで較正するとKeVのような低いエネルギーレベルでは誤差が大きくなります。
60Co 1.17MeVと1.33MeV 137Cs 0.662MeV
体重計を1Kgで較正した場合、1g程度の測定で誤差が大きいのと同じです。
ウラン崩壊系列ではその過程で幅広いエネルギー範囲のγ線を放出します。- 皆さんが考える以上に、ガイガーカウンタの測定誤差は大きいのです。
- 詳しくは放射線の測定について(コラム)をご覧ください。
世の中に出回っている代表的なGM管の感度比較です(1R≒10mGy近似)。
LND712 LND7317 SI-3BG SBM-20 D3372 J408γ CK1026 メーカー LND製 LND製 ロシア製 ロシア製 浜松ホトニクス製 中国製 RAYTHEON 検出放射線 α、β、γ α、β、γ β、γ β、γ β、γ γ γ 全長 49.2mm 76.1mm 55mm 108mm 38mm 215mm 76.2mm 直径 15.1mm 53.6mm 10mm 11mm 7mm 23mm 19mm 推奨駆動電圧 500V 500V 400V 400V 575V 420V 900V プラトー電圧 450-650V 475-675V 380-460V 350-475V 500-650V 380-460V 850-950V γ線感度(データ根拠) 18cps/(mR/h) 60cps/(mR/h) 282cps/(R/h) 22cps/(mR/h) 104cpm/(mR/h) 380cps/(uR/s) 3100cpm/(mR/h)推測値 γ線感度(シーベルト換算) 108cpm/(uSv/h) 360cpm/(uSv/h) 1.7cpm/(uSv/h) 132cpm/(uSv/h) 10cpm/(uSv/h) 633cpm/(uSv/h) 310cpm/(uSv/h)推測値 ■シーベルト換算注意事項
- 1[C/Kg]=1[s*A/Kg], 1R=2.58x10-4[C/Kg]
- SI-3BGのγ線感度は2.0x10-5[cps/(A/Kg)]=2.0x10-5/2.58x10-4x3600=282[cps/(R/h)]
- D3372はPhilips 18509-02相当であり、研究資料で104cpm/(mR/h)を発見。
- 残念ながら、感度の低いD3372やSI-3BGで自然放射線を測定するのは困難です。
- CK1024の感度は高いものの、900Vという駆動電圧がネックです。
- バックグランドがLND712=20cpm(シールドなし)に対してCK1026=60cpm(データシート値)であることから約3倍と推測できます。
- およびCK1026データシートのプラトー電圧グラフ3100cpm@900Vが「1mR/h」での値と思われることから推測しました。
- CK1026の正確な感度情報をお持ちの方がおりましたらお知らせください。
■バックグランドとは
- γ線感度から(γ線)シーベルト換算表示する場合、注意事項があります。
- α線やβ線も混在して検出するGM管では、β線などを同時に検出すると正しいγ線シーベルト換算になりません。
- 窓をアルミニウム板(3mm)で遮蔽してγ線だけに絞り込む必要があります。
- α線感度やβ線感度ではないのでご注意ください。混在状態での測定値は正確なシーベルト値でありません。
- あくまで目安としてください。
■モニタリング値との違い
- バックグランドとは測定場所による自然界からの放射線量とガイガーカウンタの素材自身からの放射線量の合計です。
- 微量放射線を測定する場合に、測定場所による測定誤差を考慮するためバックグランドをあらかじめ計測しておきます。
- 例えば、木造住宅よりコンクリート住宅のほうが放射線量が大きいことが知られています。
- 海辺よりも高い山のほうが放射線量が大きいことが知られています。
- 「自然界からの放射線量」と「ガイガーカウンタの素材自身からの放射線量」を完全分離することはできません。
- 「自然界からの放射線量」を遮蔽しようとして鉛板やコンクリート壁をつかっても、その鉛やコンクリートからも放射線が放出されているからです。
- モニタリングはNaIシンチレーション検出器を用いた主にγ線の数値です。
- モニタリングはα線やβ線を測定漏れしています。そのためガイガーカウンタは少し大きめな値を示します。
- モニタリングは本来、原子力施設からの放射能漏れを早期に検出する目的で設置されています。
- 日常の被曝線量を計測する目的ではありません。
設計した回路を実際に組み、実測してみました。これがGM管からの検出パルスです(2V/div, 0.2ms)。
- バックグランドは20[cpm]前後になります。これは0.18uSv/hに相当します。 はかるくん(γ線検出器)による値より大きいですが、α線やβ線を検出しているためです。
- γ線だけを検出したい場合は、GM管の窓を3mm厚のアルミ板で遮蔽すると良いでしょう。
- やはり安定性は抜群です。
ピークで7V、200us くらいです。GM管の仕様に最小不感時間が90us とありますのでこの程度でしょう。
(2007-10-12)
- 上空約11,277m(37,000feet)での測定結果です。約3.7uSv/hでした。これは概ね地上の20倍にあたります。
- 12,000mで5uSv/h程度といわれていますので、妥当な値といえます。
- 5,000mで地上の倍程度でしたが、その後上昇するにつれて急激に数値が増えていきました。
- 航空機内での測定ですので、金属を通過するγ線が急激に増えているものと思われます。
(2010-09-09)
- ウランガラスを入手したので、測定してみました。
- 約0.594uSv/hでした。バックグランドの3倍程度です。
- 塩化カリウムKCLが約0.315uSv/hですので、確かに微量です。
- 最低バックグラントを測定してみました。宇宙線を避けるため、地下深いところでの測定です。
- 場所はつくばエクスプレス、秋葉原駅です(-34m)。常時4-6cpm程度でした。
- これほど放射線量の小さいところは今まで経験したことがありませんでした。
- 鉛で遮蔽するよりも効果的です。
- 南北線、後楽園もかなり深いです(-37.5m)。
- 大江戸線、六本木駅(-42.3m)がもっとも深い駅です。
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- 検出電圧が7Vくらいあるのには驚きました。
- ST14が故障することが一度ありました。実験中に過酷なことをしたためかもしれません。新品に交換後、故障はありません。