ガイガーミュラー管のパルス検出方式
はじめに
- ガイガーミュラー管から検出パルスを取り出す方法には大きく2種類の方法があります。
- カソード側からとアノード側から検出パルスを取り出す方法です。
- ここではそれぞれを比較し、解説します。
著作権と免責事項
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- 仕様は予告なく変更されることがあります。
カソード検出方式とアノード検出方式の回路
- カソード検出方式とアノード検出方式の典型例を比較してみます。
- これはデータシートに記載されているLND712とCK1026のメーカ推奨回路です。(現在LND712の推奨回路はアノード検出方式に変更されています)
- GM管の種類によって微妙に推奨回路、定数が異なります。
■カソード検出方式
- 形状(口径や長さ)の小さいGM管用です。
- 形状の小さいGM管で使われます。LND712は小さいため、この方式も使えます。
- 検出パルスはカソード側の100Kから取り出します。
- プラスのパルスとなるため、後段の処理が簡単です。
- 仕組み上、カソード側は100Kでプルダウンされているイメージになります。
- このため、カソードの表面積が大きい(サイズが大きい)と外部ノイズに弱いという欠点があります。
- GM管がアンテナの役目をしてしまい、ノイズを拾いやすくなります。
- 逆にノイズを避けるために電圧取り出し抵抗を下げれば、パルス電圧不足になり、パルスをとこぼします。つまり感度が変わってしまいます。
- β線、γ線のエネルギー範囲は非常に広く、GM管は電子なだれを利用しているとはいえ、パルス電圧は変化します。
- メーカー指定の定数には長年の蓄積された理由があります。
- 長期間パルスを観察していると、いろいろなパルスを観測できます。電圧の小さいもの、パルスの重なったものなど。
- パルス電圧は一定ではなく、長年にわたる観察、経験をしないとこうした現象を見逃してしまいます。
- 定数を大幅変更すると、γ線感度が変わってしまいます。メーカーが提供しているγ線感度を利用できません。
- LND712の実際の検出パルスです(典型例です)。100[us/div]
■アノード検出方式
- 小さいGM管から大きなGM管まで利用されます。サイズの大きいLND718も同様な回路です。
- 検出パルスはアノード側のCaを経由して取り出します。
- マイナスのパルスとなるため、後段の処理が少し面倒です。
- またCaに耐圧の高いコンデンサを使用しなければなりません。
- カソード側がGNDに接地されていますので、外部ノイズに強いという特徴があります。
- カソードはGNDで電気的にシールドされているイメージです。
- そのため、形状の大きいGM管に向いています。
- CK1026の実際の検出パルスです(GND以下のパルスです)。1[ms/div]
(参考)LND712のアノード検出方式
マイクロコントローラとのインターフェース回路
- 検出パルス電圧は小さすぎたり、大きすぎたり、ノイズが混入していたりします。
- マイクロコントローラの動作電圧範囲を超えるパルス入力を行えば、ラッチアップする可能性があります。
- そのため検出パルスをカウントするために、検出パルスをインターフェースする回路が必要です。
- ここではトランジスタを使った簡単な方法を紹介します。
- オペアンプを使ったコンパレータ回路などが利用されることもあります。
■カソード検出方式
- プラスのパルスですので、NPN型のトランジスタを利用します。
- C1はノイズ防止用です。カソード検出方式はその仕組み上、外部ノイズを受けやすいためです。
- C1は小さい容量であるため、検出パルスには影響しません。
- 電圧取り出し用の100Kは多少変更の余地はありますが、大幅に変更してはいけません。
- Rkが小さすぎるとパルスを取りこぼし、メーカ提供のγ線感度を利用できなくなります。
- 2SC1815はスイッチ動作として利用します。そのためR2=100Kを小さくしすぎると単なる電流の無駄です。
- 検出電圧は厳密に言えば、RkとR1+BEの並列抵抗で受けることになりますが、TrがオンになるBE=0.6Vに達するまではBE間の電流は無視できるくらい小さいです。
- つまり、BE<0.6VではR1+BE側に電流はほとんど流れず、R1+BEは接続されていないも同様となります。
■アノード検出方式
- マイナスのパルスですので、PNP型のトランジスタを利用します。
- 電圧取り出し口はR3です。
- R3がGNDではなくVddに接続しているのはVddを直流電圧基準にするためです。推奨回路のままではGND以下のパルスで扱うことができないためです。
- 交流的(パルス)には、GND接地もVdd接地も同じことです。
- カップリングのCaはカソード検出に比べると大きいようにも見えますが、pF単位なのでこのままとします。小さすぎるとパルスを取りこぼします。
- Caには常時駆動電圧(900V)がかかるため、耐電圧が必要です。
- CK1026が放射線を検出すると、小さなパルスが起こり、Caを経由してR3間で電圧パルスとなります。CK1026がスイッチのように内部ショートするわけではありません。
- R3も大幅に変更してはいけません。小さすぎるとパルスを取りこぼします。
- C2はノイズ防止用です。C2の容量は小さいので検出パルスに影響しません。
- アノード検出方式はカソード側からノイズ混入しませんが、R3=1Mのインピーダンス(抵抗)が高いため、ノイズが入り込むことがあります。
- 2SA1015はスイッチ動作として利用します。そのためR5=100Kを小さくしすぎると単なる電流の無駄です。
- 検出電圧は厳密に言えば、R3とR4+BCの並列抵抗で受けることになりますが、TrがオンになるBC=0.6Vに達するまではBC間の電流は無視できるくらい小さいです。
- つまり、BC<0.6VではR4+BC側に電流はほとんど流れず、R4+BCは接続されていないも同様となります。
■センサーのインピーダンス
- カソード検出方式でもアノード検出方式でも共通して言えることはノイズの影響しない範囲でGM管センサー部(電圧取り出し口)のインピーダンスを高くする必要があります。
- センサー部のインピーダンスが高くなければ、検出感度を高くできません。
- センサー部のインピーダンスが低いということは検出感度が低いことを意味し、小さいパルスを拾うことができません。
- これは一般のセンサーでも同様です。
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