問題先送りのツケ、代償
事実関係の整理
少し小康状態となり、冷静に物事を整理します。
- 放射性物質の大半はまだ原発内にある。
- 放射性物質は2箇所に存在している。
- 原子炉内の核燃料(直前まで燃えていて熱い状態(運転中の水温は約280℃))
- 使用済み核燃料(燃えカスだが冷やし続けないと高温(2700〜2800℃)になる)
- いずれもまた高温にならないように冷やし続けなければならない(100℃以下)。
- 核燃料棒のジルカロイ容器は1852℃で溶け、内部の放射性物質が漏れ出す。原子炉の鋼鉄の融点は1535℃。
- 爆発は核爆発ではなく、水素爆発。高温になったジルカロイと水の酸化還元反応により水素が発生。
- 建て屋上部が吹き飛んだ。同時に放射性物質が大気中に飛散した。
- 原子炉は大きく破損していないものの、やはり一部は破損している。
- 地震、津波、水素爆発に伴い、設備が破損している。
- 放射性物質の一部は原発の外に漏れ続けている。
- 大気中にガス状、あるいは浮遊物として漏れ続けている。風に乗って移動し、地上に降り注いでいる。
- 冷却水に混入して漏れている。土壌に浸透したり、海に流れ出ている。
福島第一 | 1号機 | 2号機 | 3号機 | 4号機 | 5号機 | 6号機 |
地震発生時の状態 | 運転中 | 運転中 | 運転中 | 点検中 | 点検中 | 点検中 |
炉心内の燃料集合体本数 | 400(70%破損) | 548(30%破損) | 548(25%破損) | 0 | 548 | 764 |
プール内の使用済み燃料集合体本数 | 292 | 587 | 514 | 1331 | 946 | 876 |
プール内の新品燃料集合体本数 | 100 | 28 | 52 | 204 | 48 | 64 |
現状 | 3/12水素爆発 | 圧力抑制室から水漏れ | 3/14水素爆発 | 3/15火災 | 冷温停止 | 冷温停止 |
このほか共用プール内に使用済み燃料集合体6375本あり。
問題先送りの代償
2つの大きな問題先送りの代償を払わされることになりました。
- 使用済み核燃料の半永久保管計画先送り
- 原子の火が灯り、原子力発電所が稼動してから40年以上経ちました。
- この間、使用済み核燃料のゴミ処理問題は棚上げされてきました。
- つまりゴミ処理しないまま、核燃料は燃やし続けられてきました。
- そのため、使用済み核燃料は原発建屋内にも大量に保管されていました。
- 使用済み核燃料はプールの水でのみ保護されていた。水を失うと保護を失う。
- 原子炉内の核燃料は原子炉圧力容器と原子炉格納容器で2重に守られています。
- 破損した核燃料のゴミ処理をせざるを得なくなりました。ゴミ処理しなければ放射性物質が漏れ続けます。
- 核燃料ゴミの半永久保管場所(最終処分場)が決まっていないため、玉突き状態で原子力発電所内にも多く保管されています。
- 日本の借金先送り
- 国債や地方債の合計は900兆円(2010年度)です。日本の総預金額を超えようとしており、会社で言えば債務超過寸前、倒産寸前です。
- 特に平成に入ってから、税収と歳出のバランスが崩れ、急激に借金が増えました。
- 先送りしてきた借金が復興の足かせ、妨げとなっています。
- 復興のために借金を増やせば、信用不安から日本経済が悪化し復興することができません。
- もし、日本の借金を先送りせず、貯蓄していたら復興資金にあてられたでしょう。
- (地震は予想されているものの)こうした不意(突然)の事態に対処するためには、地震の備えとともに資金も備えておく必要がありました。
基礎知識
- 使用済み核燃料は使用した国でゴミ処理しなければならない国際的な決まりがあります。(使用責任。他国にゴミを押し付けてはいけない。)
- 核燃料ゴミは十分冷やされた後、飛散しないようガラス封入され、放射線を防ぐ容器に入れられ、地下に半永久保存される計画です。
- 使用済み核燃料は原子力発電所だけでなく、十分冷やされたものが六ヶ所村に一時保管されています。
- ドイツでは塩の廃坑に半永久保存することが決まっています。
- 日本では半永久保管場所が見つからないまま、現在に至っています。
- 核燃料ゴミを減らすため、再処理工場で一部を燃料(プルトニウム)として再生します。これをプルサーマル計画といいます。
- 日本の再処理工場はまだ稼動していないため、フランスで再処理され、核燃料とゴミが戻ってきます。
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