湿度計
秋月のキット
- 不幸にして秋月のキットを購入したみなさまに朗報です。
- 秋月のキットはみるからに動作しなさそうでしたので、はじめから回路設計しました。
- そもそも秋月の回路にはいくつかの誤りがあります。
- メーカの旧サイマレックスはサーモメトリクス(GEグループ)が引き継いでいます。
- データシート(PDF)はこちらからダウンロードできます。
- センサー湿度90%のインピーダンスを20kオームとしていますが、
これは片対数グラフの読み間違いです。正しくは2kオームです。
これは致命的な誤りで設計ミスであり、調整が正しく行われるはずがありません。
- センサーへ供給する三角波の電圧が0.1Vpp程度と低いため、
オペアンプのオフセット電圧、ノイズなどの影響で正しい値を引き出せません。
湿度30%-90% を 電圧100mV-0.2mV に変換するように設計されていますが、
LM324 オペアンプのオフセット電圧は 3mV 程度あるので、これ以下の電圧は
正しく扱うことができません。おそらく湿度50%以上はまったくあてにならない
数値になります。(たとえ正しく調整したとしても)
回路設計のポイント
実用的な湿度計を目標に回路設計しました。
- センサーへの供給電圧はデータシートの測定のとおり、最大1 Vpp としました。
これにより、オペアンプの扱う電圧範囲は 1V - 2mV になります。
オフセット電圧が 3mV 程度ですので、これでも微妙です。本来ならもっと
オフセット電圧の低い、高性能なオペアンプを使用するべきですが、
アマチュアであることと、そもそもセンサーが完全に対数変化しない
ことによる誤差を考えれば、これくらいの誤差はあきらめます。
直読できるように湿度30%-90% を 電圧0.3V-0.9V に変換します。
- ログアンプの特性をセンサーの中ほどに設定しています。
これは46%-68%の領域にあたり、この範囲では精度が良いはずです。
室内の湿度は通常この範囲にあることも考慮してのことです。
湿度の両側がもっとも誤差が大きくなります。
- ログアンプで温度補償をしています。抵抗2kを同じ程度の抵抗を持つ
サーミスタに変更するとさらによいでしょう。
- 部品は入手が容易なことと、安価であることに配慮しました。
LM324の代わりにNJM2902でもかまいません。
- できるだけ再現性がよく、しかも調整が容易であるように配慮しました。
回路図
注意事項
- ログアンプ、三角波、絶対値のオペアンプは同じICパッケージ内で構成してださい。
これは特性をあわせるためです。(回路図ではICピンの自動割り振りを行っていますので
好ましくありません。)
- 2mV という微小電圧を扱うので、ノイズに注意して配線ください。
- ログアンプのトランジスタは同じ特性のものが好ましいです。
同じロットのものを使用するといいでしょう。なお、Y ランクで
回路を設計しています。GR ランクは使えません。
できればエポキシ樹脂で2つのトランジスタを温度結合すると良いでしょう。
- 実用に耐える程度の湿度計ですが、完全に誤差を取り除くことはできません。
特に両端では10%程度の誤差があると思ってください。
そもそもセンサー(HS15P)の特性があまりよくないため、高性能なオペアンプを
使用しても精度は期待できません。
- オペアンプは単電源で動作しますが、ログアンプなどでマイナス電源が必要と
なるため、仮想的なGNDを生成しています。この仮想 GND を基準にしてオペアンプ
が動作しています。出力を外部で使用するときにはご注意ください。
もう一段、オペアンプを入れてオフセット調整すると扱いやすくなります。
調整方法
- VR1が三角波のデューティ比調整です。センサーの代わりに
1Mオームを接続し、きれいな三角波になるように調整してください。
オシロがない場合には、-0.5V(Gndに対して)程度にしてください。
- VR2がセンサー部のオフセット調整です。センサーを接続し
センサー間の電圧がゼロになるように調整してください。
センサーは直流に弱いのでこれを防ぐためです。
- VR3がゲイン調整です。センサーの代わりに100kオームを接続し
出力が0.46Vになるように調整してください。
10kオームを接続したときに約0.68Vになるはずです。
基板例
評価
設計した回路を実際に組み、実測してみました。データを片対数に描いて比較してみます。
- 理想:センサー(HS15P)の特性(データシートから読み取り、25C)
- 実測:センサーの代わりに抵抗を接続して測定
- ログ:ログアンプの特性(ログアンプの入出力特性)。
入力 | 理想 | 実測1 | 実測2 | ログ |
2mV | 0.875V | 0.773V(2kΩ) | 0.790V(2kΩ) | 0.702V |
10mV | 0.680V | 0.665V(10kΩ) | 0.693V(10kΩ) | 0.593V |
0.1V | 0.460V | 0.429V(100kΩ) | 0.456V(100kΩ) | 0.367V |
1.0V | 0.300V | 0.193V(1MΩ) | 0.199V(1MΩ) | 0.108V |
- 実測値はログアンプの特性をそのまま示していることが良くわかります。
理想値よりやや低めの値を示していますが、湿度46% - 68%の間で
数%程度の誤差です。両端では理想値そのものの対数特性が変化して
いますので、誤差が大きくなっています。
温度でセンサー特性もかなり変化するので、このくらいでも十分実用
レベルでしょう。
- 実際にHS15Pを接続し、別の湿度計(5%誤差)と比較してみましたが、
ほぼ同じ値を示します。ただ、HS15Pの方がセンサーの応答性が良いので、
風を受けるだけですぐに変化します。
©2001 All rights reserved by Einstein.