スーパーへテロダイン方式(superheterodyne)のAMラジオです。なかなか原理を理解できず、さらにコイルの種類がよくわからず苦労したものです。
単にスーパーと略したり、superhetと呼ぶ場合もあります。
受信周波数 535KHz - 1605KHz 受信方式 スーパーへテロダイン方式 出力 イヤホン 電源 単三x1 消費電流 6.5mA 電池寿命 アルカリ電池2000mAH/6.5mA=307hour
- 部品点数を最小限にとどめています。
- OSCを安定させるために、局部発振をベース同調帰還からエミッタ同調帰還に変更しました。
- 電池一本で動作するように設計しています。(0.9Vまで動作します。)
- 後段の低周波増幅器でマグネチック・イヤホンやスピーカーを駆動します。
- 外部アンテナなしで、受信することができます。
値 数 備考 1N4148 1 D1 シリコンダイオード 300K 1 R1 カーボン皮膜抵抗1/4W 1K 1 R2 カーボン皮膜抵抗1/4W 10K 1 R3 カーボン皮膜抵抗1/4W 47K 1 R4 カーボン皮膜抵抗1/4W 10K 1 VR1 ボリューム(Aカーブが望ましいが、BカーブでもOK) 0.01uF 2 C2, C4 セラミックコンデンサ 0.0022uF 1 C1 セラミックコンデンサ 10uF 2 C3,C5 縦型電解コンデンサ(耐圧16V) 2SC1815GR 3 Q1,Q2,Q3 NPN汎用トランジスタ、ランクはGR SP 1 SP マグネチック・イヤホン 赤コイル 1 OSC1 発信用コイル,OSC7S-R,代替品WARC01 黄コイル 1 IFT1 初段用コイル,IFT7S-Y,代替品WARCA2 黒コイル 1 IFT2 検波用コイル,IFT7S-B,代替品WARCC4 150pF+70pF 1 VC 2連ポリバリコン、CBM-223B-1F4 600uH 1 T1 バーアンテナ、SL-55X SL-55X、あさひ通信
- 2SC1815Yを使う場合は、R1を180Kか200Kにします。
- 検波用のダイオードはAGC用のR3を経由してバイアスがかかります。そのため、シリコンダイオードが使えます。
- 波の重ね合わせの原理を利用しています。周波数F1にF2を重ね合わせると、F2±F1の波が出力されます。
- この低いほうのF2-F1が455KHzになるように調整します。この周波数を中間周波数IF(Intermediate Frequency)と呼びます。
- 一旦、中間周波数に変換することにより、後段のフィルタ設計や増幅設計が容易になります。
- 異なる周波数に変換することにより、前段と後段で回り込みによる発振を防ぐことができます。
- 周波数の引き算をしているので、選択度も高くなります。
- もともとヘテロダイン(heterodyne)は「混合」を利用したモールス信号器に使われていた技術です。トーンの違いで長短を聞き分けていました。
- これをラジオに応用し、固定した中間周波数へ変換する技術をスーパーヘテロダイン(superheterodyne)と呼びます。
- 同調と局部発振に連動した(2連)バリコンが必要になります。
- 同調側に150pF、局部発振側に70pFを使用します。それぞれ対応するインダクタは600uH(バーアンテナ),360uH(OSCコイル)で共振させます。
- 同調周波数と局部発振周波数の変動幅を計算しました。目標範囲をカバーしていることを確認できます。
- 同調周波数と局部発振周波数を微調整して、中間周波数IFになるようにします。
- このため、スーパーヘテロダインの調整は難しいという弱点があります。
同調周波数F1 535KHz 1605KHz 局部発振周波数F2 990KHz 2060KHz 中間周波数IF=F2-F1 455KHz 455KHz
Q1のエミッタ波形です。990KHzから2060KHzを発振していることがわかります。
Q2のコレクタ波形です(ACフィルタ)。455KHzのAM変調を確認できます。
検波波形です(ACフィルタ)。音声を確認できます。
同調側(150pF)と局部発振側(70pF)の見分け方です。
内部のフイルムの厚さが薄い側が局部発振側(70pF)、厚い側が同調側(150pF)です。
裏面のトリマで微調整します。非金属の棒を用いないと微調整できません。
スーパーヘテロダイン方式に欠かせないコイルの説明を見かけないので、ここで解説します。
これを理解していないと間違ったコイルの使用方法につながります。
局部発振器(OSC)と中間周波数(IF)を扱う、AM用コイルは4種類あります。これらを通称OSCコイル、IFTコイルと呼びます。
IFTコイルは455KHzで共振するフィルタの役目を果たします(各段の回路を接続するときに使用)。
形状の違いにより、7mm角と10mm角があります。メーカを問わず、目的別に色分けされています。
白コイルは中間周波数増幅器を多段階にするとき使用します。そのため使用しないこともあります。
赤コイル 発振用(360uH、2連ポリバリの70pF側と共振して使用) 黄コイル 初段用455KHz(コンデンサ内蔵、IFの初段で使用) 白コイル 段間用455KHz(コンデンサ内蔵、IFの中段で使用) 黒コイル 検波用455KHz(コンデンサ内蔵、検波段で使用)
本来であれば、コイルのインダクタンス値を測定すべきですが、コンデンサを内蔵しているため測定できません(共振してしまうため)。
そこで参考までに各ピン間の抵抗値[Ω]を測定しました。抵抗値から巻き数比率を推測できます。
2ピンは1-3ピンの中間にあるわけではないことがわかります。電圧の引き出し側を検討する必要があります。
コイルには磁束方向があるため、電流方向に気をつける必要があります。そのため4ピンと6ピンの接続を入れ替えると動作しないことがあります。
コイル 1-2 2-3 4-6 赤コイル 0.1 2.6 0.2 黄コイル 3.8 1.4 0.1 白コイル 3.7 1.9 0.2 黒コイル 3.4 1.8 0.9
- バーアンテナを金属製のワイヤーで固定してはいけません。周波数範囲が移動します。プラスチック製の結束バンドを利用します。
- バーアンテナの下にシールドを設けてはいけません。感度が下がります。
調整にあたって最低限周波数カウンタが必要です。(C)2010 All rights reserved by Y.Onodera.
- 局部発振周波数F2の範囲が990KHz-2060KHzとなるように赤コイルとVC2のトリマを調整します。(Q1のエミッタにカウンタを接続)
- 同調周波数F1の範囲が535KHz-1605KHzとなるようにVC1のトリマを調整します。
- 周波数全域にわたって中間周波数IFが455KHzとなるように黄コイルを調整します。(IFT2の4ピンにカウンタを接続)
- 1-3の操作を繰り返して調整します。
- 黒コイルは音量が最大になるように調整します。
- VC2の引き回し線が長いと周りの影響を受け、OSC周波数が変動します。本来であればポリバリコンを基板に固定すべきでしょう。
- 選択度が高く、近接する弱い局も受信できます。
- 性能は調整次第のところがありますが、やはり抜群です。レフレックスで受信できなかった局も受信できます。
- バーアンテナの入手が困難です。そのため、相当品を使うことも多いでしょう。
- ものによって発振することがあります、このようなときはアンテナの端子を逆に接続すると止まることがあります。