電源記号
- 2012-05-25 初版
- 2014-02-10 第2版
はじめに
- 電源記号について解説します。
- 最近、初歩的な質問を受けます。
- 回路図にVddが複数あるけどつなげる必要はあるの?
- VddとVccの違いは?
- Gndはどこにつなげるの?
- 回路図を読める方にとっては常識ですが、初心者にとって意外な障壁のようです。
- 確かに電源記号についての解説をあまり見かけません。
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- 仕様は予告なく変更されることがあります。
電子回路の歴史
- 解説にあたり電子回路の歴史的な背景をまず理解しておく必要があります。
- 電子回路の進化と関係しているからです。
- あまり歴史を遡っても混乱するので、真空管時代は省略します。
トランジスタ、ICの発明
- P型半導体とN型半導体からなるバイポーラ・トランジスタ:Bipolar Transistorが発明されました。
- バイとは「2つ」という意味でポーラとは「極」という意味です。双極性トランジスタとも呼ばれます。
- 構造が2つの極性で構成されているためです。
- 構造によりNPNとPNPがあります。エヌピーネヌ、ピーネヌピーと読みます。
- 3つの端子は「エミッタ:Emitter,ベース:Base,コレクタ:Collector」と呼ばれます。
- このエミッタ、コレクタは電源に接続されることが多く、ここからVcc:Voltage Collector, Vee:Voltage Emitterとなりました。
- ベースは入力端子です。
- 両電源アンプの回路図にVcc, Veeをよくみかけます。
TTL:Transistor-Transistor Logic
- ティティエルと読みます。
- バイポーラ・トランジスタ(PNP,NPN)を利用した論理回路IC(ロジックIC)です。
- トランジスタ同士を結合した構造なので、Transistor-Transistorです。
- それ以前はダイオードとトランジスタを結合した構造で、Diode-Transistorでした。
- ICの時代になっても電源記号にVcc, Veeが使われます。
電解効果トランジスタ:Field Effect Transistor
- エフイーティと読みます。(最近、フェットと読む方がいます。何が正しいか規定はありませんが、歴史的にはエフイーティです)
- NPNとPNPの対抗馬としてFETが登場したので、エフイーティと読んだのでしょう。
- ユニポーラ・トランジスタとも呼びます。
- ユニとは「1つ」という意味でポーラとは「極」という意味です。
- 構造が1つの極性で構成されているためです。
- 構造によりN型FETとP型FETがあります。
- 3つの端子は「ドレイン:Drain,ゲート:Gate,ソース:Source」と呼ばれます。
- このドレイン、ソースは電源に接続されることが多く、ここからVdd:Voltage Drain, Vss:Voltage Sourceとなりました。
- ゲートは入力端子です。
MOSFET:Metal Oxide Semiconductor FET
- モスエフイーティと読みます。(モスフェットも同上)
- 金属酸化膜半導体電界効果トランジスタです。
- 構造によりN型MOSFETとP型MOSFETがあります。
CMOS:Complementary Metal Oxide Semiconductor
- シーモスと読みます。
- N型MOSFETとP型MOSFETを組み合わせた構造のICです。
- バイポーラ・トランジスタよりも消費電力が小さいメリットがあります。
- CMOSは原理的に状態が変化しない限り、電気を消費しません。TTLは状態を保持するために電気を消費します。
- そのため、現在CMOSが主流です。
- ただし、CMOSはTTLに比べて信号速度が遅いというデメリットもあります。速度を上げると消費電流が増えるというデメリットもあります。
- CMOSの小型化、高速化、低消費電力化などの改良が進められています。
- ICの時代になっても電源記号にVdd, Vssが使われます。
Vcc,Vee,Vdd,Vss
- このように内部構造の違いでVcc,Vee,Vdd,Vssを使い分けます。
- 逆に言えば、ICの電源端子を見ることで、内部構造がTTLなのかCMOSなのか判断することができます。
- 全体回路図ではTTLとCMOSが混在することが多く、明確な使い分けが難しい場合があります。
- IC内部でもTTLとCMOSが混在していることもあり、電源記号は厳密ではありません。
- 電源記号としてV+,V-などを使うこともあります。
グランド:Gnd
- グランドとは「基準電位」で通常0Vを示します。
- 両電源回路ではVcc=12V,Gnd=0V,Vee=-12VのようにGndが基準電位になります。
- 単電源回路では通常Vcc=5V,Gnd=Vee=0Vのように、GndとVeeが等しくなります。
- CMOSでは通常Vdd=5V,Gnd=Vss=0Vのように、GndとVssが等しくなります。
- このようにGndはVeeやVssと必ずしも同じとは限りません。
- 設計者が回路全体を考えて、Gndを決定します。
電源記号:Vcc,Vee,Vdd,Vss,Gnd
- 回路図には多くの電源端子が存在します。複雑になればなるほど電源端子は増えます。
- 電源端子を結ぶ線をすべて記述するのは大変ですので、電源記号を用いて線を省略します。
- これにより、回路図が見やすくなります。
- 回路図とは「理屈上の話(理論)」であり、「実体配線図(現実)」ではありません。
- このように電源記号は回路図上に点在しますが、実際の回路では接続する必要があります。
アース:Earth
- 正確にはアースとグランドを区別します。
- アースは接地ともよばれ、家電製品によっては漏電防止用に接地端子が用意されています。
- アースとはその名の通り、地球、地表を意味します。アース棒を地中に埋めてアース端子とします。
- 家電製品の接地端子を地球に接続します。
グランド
- グランドもシグナル・グランドとフレーム・グランドに区別されます。
- シグナル・グランドとは回路の信号グランドです。
- フレーム・グランドとはシャーシやケースです。
- 電流の回り込みを防止するため、通常はシグナル・グランドとフレーム・グランドを1点で接続します。
- 大型家電製品を除き、フレーム・グランドをアースに接続することはほとんどありません。
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