半導体放射線検出器
- 2011-04-12 初版
- 2011-05-04 第2版
- 2011-05-23 第3版
- 2011-06-30 第4版
- 2011-07-15 第5版
- 2011-09-08 第6版 PS100-7とPS100-6比較
- 2011-09-17 第7版 ノウハウ追加
- 2012-02-23 第8版 機能一覧
- 2012-08-21 第9版
はじめに
- GM管の入手が困難なため、PINフォトダイオードで放射線量計を開発中です。
- シンチレータ方式もありますが、そもそもシンチレータの入手が困難です。
- 大型のPINフォトダイオードを使用し高感度です。
- 最大の特徴はγ線エネルギー補正機能を搭載していることです。
- 一般の放射線量計はCs-137で較正されているため、Cs-137に対してのみ正しい値を示します。
- つまりγ線エネルギーの異なるCo-60では正しい値を示しません。
- 正しい値を知るためにはエネルギー補正機能が必要となります。
- 上はAIR COUNTER_Sです。
機能一覧
- 放射線量率[uSv/h]と放射線量[uSv]の表示です。
- uSv/h表示は60秒の移動平均です。そのため表示間隔は1秒です。
- 空間放射線量(外部被曝)を測定する目的に使用します。
- [cps]と[cpm]の表示です。
- cpm表示は60秒の移動平均です。そのため表示間隔は1秒です。
- 表面汚染検査や放射性物質の検出目的に使用します。
- [KeV]表示です。
- 直近のγ線エネルギー表示です。
- Alarmレベルの設定です。
- 設定値より高い場合、アラームを鳴らします。
- 較正値の設定です。
- 校正用放射線源を利用して、uSv/h表示を微調整します。
- (積算)放射線量[uSv]を0にします。
- 放射線量[uSv]は電源オフでも保持されるため、リセットするときに使用します。
原理
- GM管を使わない放射線検出器です。
- PINフォトダイオードを使ったγ線、X線の検出器です。
- 放射線がフォトダイオード内部で吸収や散乱すると電荷が発生します。吸収時を光電効果、散乱時をコンプトン効果と呼びます。
- この電荷を電圧パルスとして取り出します。
- 原理上、β線、γ線、X線を検出します。アルミ箔で遮光するため(あるいはウィンドウのため)、α線を検出できません。
フォトダイオードの要件
- 受光部をアルミ箔で遮光すること。不要な可視光を遮断し、β線、γ線、X線のみを透過させるためです。
- さらにβ線を遮蔽するには1-3mmのアルミ板を使います。
- PIN構造(p-intrinsic-n)であること。
- PN構造は逆電圧を掛けたときの逆電流(これを暗電流という)が大きいため適しません。つまり太陽電池は適しません。
- 受光面積が広いこと。感度は受光面積に依存。放射線のあたる面積が小さいと検出確率が小さい。一般的には10x10=100[mm2]程度必要。
- 空乏層が厚いこと。薄いとγ線が衝突せずに通過してしまう。300um以上。
- PS100-7, X100-7のシリコン厚は 380umです。
PINフォトダイオードの候補
Silicon Sensor は社名を First Sensor に変更しました。(2011-07-15)
メリット
- GM管のような高電圧を必要としません。
- パーツがすべて小さいため、全体を小型化できます。
デメリット
- 放射線検出用PINフォトダイオードの入手性が悪いようです。特に広い受光面積は研究用で商用ではなさそうです。
- 放射線はPINフォトダイオードの構造を徐々に壊すため、劣化していきます。特に強い放射線では寿命が短かくなります。
- 人工衛星に搭載の太陽電池(半導体)は放射線の影響により短寿命であることが知られています。
- γ線感度が公表されておらず単位換算が難しいかもしれません。
- 調査したところ高価です。参考価格 S3590-09=$217、S3590-19=$289
- ガイガーカウンタのγ線は無指向です。半導体放射線検出器は構造上、指向性があります。
- 電磁波ノイズに弱い。感度が高いため、電気的なノイズに弱いです。
- 衝撃に弱い。感度が高いため、部品への衝撃が電気的なノイズとしてあわられます。
- 特に積層セラミックコンデンサは衝撃により容量が変化することでノイズを発生します。これをマイクロフォニック・ノイズと呼びます。
入手先
著作権と免責事項
- 個人利用に限定され、著作権者の許可なく商用利用できません。
- 直接間接に関わらず、使用によって生じたいかなる損害も筆者は責任を負いません。
- 仕様は予告なく変更されることがあります。
回路図(PS100-7-CER用)
- 放射線により発生した電荷の流れ(電流)は瞬間的なインパルスであり、フォトダイオードのインピーダンスも高いためそのまま扱うことができません。
- そこで初段のチャージアンプで電荷を電圧に変換します。インパルスは方形波に変換されます。インピーダンス変換という意味合いもあります。
- チャージアンプの出力Voutは入力される電荷をQとすると次の式で表されます。
- C1は1pFから5pFの範囲で調節します。C1が小さいと検出パルスの電圧が高くなり、C1が大きいとノイズを低減できます。
- チャージアンプの出力は尾の長い方形波であるため、カウントするために短いパルスへ変換する必要があります。
- そこで微分回路でパルス波形にします。微分回路の出力Voutは次の式で表されます。周波数f0より小さいとき微分動作をします。
- 下振れしないパルスが理想ですが、パルスの尾が平らであったり、盛り上がっていると雑音が多重して誤カウントします。
- カウントすることだけを目的とする場合、むしろ少し下振れしたパルスの方が誤カウントを防止できます。
- このあとに目的に応じて、積分回路やベースライン再生回路、コンパレータを追加したりします。
- チャージアンプや微分回路で使用するオペアンプには高性能が求められます。
- バイアス電流が小さく、スルーレートが高く、利得帯域幅が広いことが必要です。
- LMC662はバイアス電流が最大でも2pAと小さいのですが、スルーレート=1.1V/us、利得帯域幅=1.4MHzと少し性能不足です。
- 昔に比べれば、LMC662でも高性能です。入手できるようであれば、もっと高性能なオペアンプにすると良いでしょう。
- 波高分析すれば、エネルギー分布を知ることができます。
- PS100-7-CERの逆電圧耐圧は30Vです。
- 回路は修正されるかもしれません。
- バイアス電圧変更のためR5,R6の値を変更しました。(2011-07-15)
部品表(PS100-7-CER用)
型番 | 数 | Parts | 備考 |
2p | 1 | C1 | セラミックコンデンサ |
1000p | 1 | C2 | セラミックコンデンサ |
10u | 2 | C3,C4 | 縦型電解コンデンサ,耐圧16V |
10M | 1 | R2 | カーボン抵抗1/4W |
1M | 1 | R4 | カーボン抵抗1/4W |
75K | 1 | R5 | カーボン抵抗1/4W |
47K | 1 | R6 | カーボン抵抗1/4W |
10K | 2 | R1,R3 | カーボン抵抗1/4W |
LMC662 | 1 | U1 | CMOSオペアンプ |
PD | 1 | PD | 放射線検出用PINフォトダイオード |
回路図(S6775用)
- PS100-7-CER用回路のPDをS6775に置き換えます。
- S6775の逆電圧耐圧は35Vです。
- そこで感度を上げるために、コッククロフト・ウォルトン回路で約15Vを供給します。
- 電流は必要ありません。
部品表(S6775用)
型番 | 数 | Parts | 備考 |
0.01p | 6 | C1,C2,C3,C4,C5,C6 | 積層セラミックコンデンサ |
1N4148 | 6 | D1,D2,D3,D4,D5,D6 | 汎用ダイオード |
評価(PS100-7-CER)
- PINフォトダイオードのサンプルを入手しました。
- シールドケースが必要です。ノイズがあり感度が高すぎるようです。
- γ線をパルスとして検出しているようです。
- パルスは 200-500[mV], 50[us]です。
これが PS100-7-CERです。
試作です(30 x 40mm, 1mA at Vdd=5V)。
ノイズとパルス
パルスの電圧範囲は 200-500[mV] でパルス幅は 50[us]
安定させるためにシールドを強化
基板化し、ガンマカウンタにしました。
半導体放射線検出器とガイガーカウンタの比較
| LND712 | PS100-7-CER | S6775 |
検出放射線 | α、β、γ | γ | γ |
バックグランド | 18[cpm]=0.150[uSv/h] | 6.5[cpm] | 0[cpm] |
ウランガラス | 70[cpm]=0.583[uSv/h] | 178[cpm] | 12[cpm] |
- 低いエネルギーのγ線を取りこぼしを防ぐため、スレッショルドを調節したところ、感度があがりました。
- 差分を比較し、半導体放射線検出器のγ線感度を計算すると332cpm/(uSv/h)くらいです。LND712の感度を超えました。
- すばらしい。ガイガーミューラー管でなくても自然放射線を測定できます。
- 簡易的な較正テストをしていただいたところ、非常に精度がよく、安定性もよいとのことでした。
- S6775を入手したので、入れ替えて比較してみました。面積比では1/4ですが、実際の感度は1/15でした。
- 面積に比例しない理由は、S6775がプラスチックパッケージのためと思われます。
- β線はプラスチックを通り抜けにくくなります。
- また空乏層が薄いことが原因かもしれません。
- 空乏層が厚いと衝突確率が増え、検出率があがります。
- S6775では実用レベルにありません。
- 標高実験をしていたところ、興味深い事実を発見しました。(2011-07-15)
- 富士山五合目(2388m)で実験したところ、発振してしまい、計測不能に陥りました。
- 発振は電源を切らないと収まりません。今までこのようなことはありませんでした。
- 何度行っても再現します。
- 推測ですが、標高の高いところでの宇宙線(γ線)は数が多いだけではなく、強度(エネルギー)も高いことが原因です。
- エネルギーが高いために、発生するパルスが大きすぎて振幅がオーバーシュートし、5Vレギュレータを発振させます。
- 5Vレギュレータ(S-812C50AY-B-G)もCMOSで発振することがあります。対策としてパスコンの容量を増やしました。
- 検出パルス波形はプラス方向:マイナス方向=3:2のため、オフセットもそれにあわせました。
評価(S6775)
感度を上げる方法を試していますが、現在のところS6775では自然界の放射線を検出するのは困難です。
強力な放射線源がないかぎり検出しないので動作しているか判断できず、落胆します。
残念ながら実用レベルに達していません。
- PDの面積を稼ぐために並列にする。
- PDの逆電圧を上げる。
PD素子数の特性
- PD素子数を倍にするとノイズは約1.5から2倍になります。
- 検出パルス回数は約1.5倍になります。
- 検出パルスの電圧は変わりません。
- そのため、PD素子を増やしすぎると検出パルスがノイズに埋もれてしまいます。
- せいぜい2素子が限界です。それ以上は逆効果です。
- また、PS100-7-CERを\5000以下で入手できることから、コスト面でもS6775(\500x10)を複数接続するメリットがありません。
PD逆電圧の特性
- 逆電圧をあげると、検出パルスの電圧が上がります。
- ノイズ電圧は変わりません。
- つまり、逆電圧を上げることは低いエネルギーのγ線を検出することになり、感度が上がります。
- ただし、劇的に改善されるわけではなく、5V時に比べて20V時は1.4倍の検出になる程度です。
ローノイズオペアンプ使用
- パルス検出のスレッショルドを下げたり、増幅度を上げて検出率を上げる方法です。
- LMC662でもすでに限界域にあるため、さらにシールドを強化するなどの対策が必要になります。
- あまりスレッショルドをぎりぎりにしたり、増幅度を上げると動作が不安定になり逆効果です。
PD表面のプラスチック(遮蔽物)
- 弱いβ線はプラスチックを透過できません。
- 極力、PDの遮蔽物を少なくして感度を上げます。
- プラスチックケースのPD部分に穴を開けると感度が約4倍あがります。
- S6775のプラスチックパッケージ表面を削るとさらに感度が上がるでしょう。
エアーカウンターSの検出部設計
エアーカウンターSの実現方法、設計思考を少しご紹介します。
まずは大前提に低コストがありました。大幅に不足しているガイガーカウンターを手ごろな価格で提供することが第一目的でした。
このほかにも多くの要望がありました。
- 低コストで提供すること。
- 大量生産できること。
- できるだけ早く提供すること。
- 福島の関連工場で製造することで雇用を守ること。
- 高精度高機能ではなく、最小限の精度(実用感度、実用精度)と使いやすさを優先すること。
- 実用感度、実用精度とは身の回りの環境が安全であるかどうかを確認できる程度です。
- コスト高になるため較正証明書の発行は受けず、そのかわりに個別調整することである程度の精度を確保します。
- 利益目的ではなく、社会貢献という意図が強くありました。
もちろんコストを掛ければ、高感度の線量計を提供できますが、それではコスト高になってしまい手の届かないものになります。
社会貢献という意図に賛同し、技術協力することにしました。
- コストの関係でS6775の使用は決定していました。
- 実用感度を得るために、最終的にS6775素子を4つとなりました。事前テストで1つだけでは感度が低いことがわかっていたためです。
- 事前評価で単純にS6775素子を並列駆動しても雑音の影響が大きいため、S6775素子とオペアンプ経路はセットで独立させ、雑音を最低限に押さえ込んでいます。
- つまり、PDとアンプを合計4セット用意し、コンパレータを通した後で、検出パルスをマイコンで取り込みます。
- さらにPDの逆電圧をコッククロフト回路で供給することで感度を少し稼いでいます。
- もっと優れたオペアンプもありますが、早期に提供するため、入手製がよく低コストのLMC662を使っています。
- 評価をLMC662で行っているため、オペアンプを変更すると再評価も必要になり、開発時間が長引いてしまいます。
低コストと早期に提供することを優先していたため、当時としてこのような結論に至りました。現在であれば、低コストのまま高感度を実現できます。
- 4つのS6775ではなく、1つのX100-7を利用することで高感度、低コストにできます。
- 量産効果で、X100-7を利用するほうがコスト低減できます。当時はX100-7の量産価格が不明でした。
- 1つのX100-7で4つのS6775以上の高感度を得られ、しかもオペアンプの数も削減できます。
- もう少し高性能なオペアンプも使います。
- 高感度のため、測定時間を短縮することができます。
- マイコン側の性能によりますが、γ線エネルギー補正機能を盛り込めれば、精度を高めることができます。
評価(PS100-7 と PS100-6)
- 左がPS100-7-CERpin(ウィンドウなし)です。
- 右がPS100-6-CER2PIN(シリカウィンドウあり)です。
PS100-7とPS100-6の比較
LM662 | PS100-7-CERpin | PS100-6-CER2PIN |
バックグランド | 1[cpm] | 18[cpm] |
ウランガラス | 143[cpm] | 53[cpm] |
オペアンプの比較
OP | PS100-7-CERpin | PS100-6-CER2PIN |
バックグランド | 7[cpm] | 105[cpm] |
ウランガラス | 374[cpm] | 302[cpm] |
- 本来ウィンドウなしのPS100-6-CER2PINを想定していたのですが、シリカウィンドウありが届きました。
- ウィンドウはオプションでエポキシ樹脂、シリコン樹脂、ガラス、シリカを選択できます。デフォルトはウィンドウなしです。
- 測定条件は同じです。フォトダイオードを差し替えています。
- PS100-6は暗電流が低い(つまりは抵抗が大きい)ためか、若干のノイズを拾っているかもしれません。
- そのため、バックグランドが下がりきっていません。スレッショルドを調整する必要があるでしょう。
- シリカウィンドウがあってもこれだけの検出率があるということは、シリカウィンドウなしはもっと検出するでしょう。
- ウィンドウなしは汚れや空気との反応問題があります。
- とある高性能オペアンプに変更したところ、検出率が上がりました。
ノウハウ
- 回路図どおりに製作しても動きません。
- 非常に多くのノウハウが必要です。
- ここに上げたノウハウは一部です。
- 特に基板設計が重要です。
■微小電流、電圧
- まずセンサー部分でどのくらい微小電流、電圧を扱わなければならないかを考察してみます。
- 厳密な計算ではなく大雑把なオーダー(ミリ、マイクロ、ナノ、ピコ、フェムト単位)を知ることが目的です。
- 仮にセシウム137(662KeV)がすべて半導体に衝突したとする(このようなことは実際にありません)と662KeV/3.65eV=181K個の電子(電荷)が発生します。
- 1電荷=1.6E-19クーロン
- ですから、合計の電気量は181Kx1.6E-19=28.96E-15クーロンになります。(1クーロンとは1Aの電流が1秒に運ぶ電荷です。)
- チャージアンプの変換はV=Q/Cですから、C=2pFのとき、V=28.96E-15/2E-12=14.48mVの電圧が生じます。
- 実際はこれ以下の電圧ということになります。
■宇宙線由来のγ線
- たまに、宇宙線由来の非常にエネルギーの大きいγ線を検出します。
- 微小電圧を扱っている中で、非常に大きなパルスが生じます。
- これはノイズではありません。
- 誤動作しないような対策が必要です。
- 宇宙線由来のγ線は富士山や航空機内で観測されます。
■ノイズ対策
- 微小電圧を扱うため、内部ノイズはもちろん外部ノイズ対策も必要です。
- ブレッドボードでは外部ノイズを避けられません。
- できるだけ小型化して配線を短くし、ノイズ混入を避けます。
- もちろんシールドもしっかりと行います。
■リーク(漏れ)電流対策
- 微小電流を扱うため、リーク電流を防ぐ必要があります。
- 基板素材は絶縁性の高い、ガラスエポキシ(FR-4)が望ましいです。
- 紙フェノールや紙エポキシは向いていません。
- もちろん基板を手で汚してはいけません。
- またオペアンプの入力部をガードリングしてリーク電流の影響を下げます。
■電源分離
- 内部ノイズ混入対策です。
- デジタル電源とアナログ電源を分けることが理想です。
- 専用の3端子レギュレータを用意すると良いでしょう。
■オペアンプのオフセット電圧変動
- オフセット電圧よりも温度変化(ドリフト)によるオフセット電圧変動が小さいことが必要です。
- カウントする際のスレッショルド(閾値)に影響するためです。
- オフセット電圧温度特性の小さいオペアンプを選択します。
■暗電流の温度ドリフト
- フォトダイオードはダイオードの1種であるため温度による影響があります。
- PS100の暗電流の変動率は13%/℃です。つまり8℃の変動があると暗電流が2倍変動します。
■逆バイアス
- フォトダイオードの逆電圧を上げると検出電圧がはっきりしてきます。
- 逆電圧の上限を超えないようにします。
- オペアンプの動作電圧にも注意します。
■ロジック電圧とオペアンプの電源電圧
- ロジック電圧は5Vと3.3Vがよく使われます。
- それにあわせてオペアンプとデジタル側のインターフェースを考える必要があります。
- 一般的には単電源オペアンプの電源電圧をロジック電圧側にあわせます。
- ロジック電圧を超えて入力するとラッチアップを起こすことがあります。
- また3.3Vで動作する単電源オペアンプを選択しなければならないことがあります。
- 例えば、LMC662の電源範囲は5Vから15Vのため、3.3V動作できません。
■オペアンプの比較
| LMC662 | NJU7032 | LMC6482 | OPA2353 | AD8616 | AD8656 | AD822 |
利得帯域幅 | 1.4MHz | 1.5MHz | 1.5MHz | 44MHz | 24MHz | 28MHz | 1.8MHz |
スルーレート | 1.1V/us | 3.5V/us | 1.5V/us | 22V/us | 12V/us | 8.5V/us | 3V/us |
ノイズ | 22nV/√Hz | - | 37nV/√Hz | 22nV/√Hz | 8nV/√Hz | 2.7nV/√Hz | 25nV/√Hz |
電源電圧 | 5-15V | 3-16V | 3-15V | 2.7-5.5V | 2.7-5.5V | 2.7-5.5V | 3-36V |
オフセット電圧 | ±1mV(type) | ±10mV(max) | ±0.11mV(type) | ±3mV(type) | ±23uV(type) | ±44uV(type) | ±0.5mV(type) |
オフセット電圧温度特性 | ±1.3uV/℃ | - | ±1uV/℃ | ±5uV/℃ | ±1.5uV/℃ | ±0.4uV/℃ | ±2uV/℃ |
入力バイアス電流 | ±0.002pA(type) | ±1pA(type) | ±0.02pA(type) | ±0.5pA(type) | ±0.2pA(type) | ±1pA(type) | ±2pA(type) |
入力オフセット電流 | ±0.001pA(type) | ±1pA(type) | ±0.01pA(type) | ±0.5pA(type) | ±0.1pA(type) | ±10pA(max) | ±2pA(type) |
■オペアンプの選択
- 入力バイアス電流が小さいこと。1pA以下が望まれます。
- スルーレートが高いこと。10V/us以上が望まれます。
- 利得帯域幅が広いこと。20MHz以上が望まれます。
■シミュレーション
- 回路設計は机上だけでうまくいきません。理論と実際には必ずギャップがあります。
- また机上の計算でわからないこともあります。実際の波形などはオシロスコープで確認する必要があります。
- インピーダンスが高すぎて、実際の波形を観測することが不可能なこともあります。
- 実際の測定は手間がかかるため、LTspiceによるシミュレーションを行っています。
- 条件を変え、何度もシミュレーションを行っています。
- 測定とシミュレーションを繰り返し理論と実際を近づけていきます。
What's next
- 波高統計をとれば、γ線のエネルギー分析ができ、放射性核種を特定することができます。
©2011-2012 All rights reserved by Y.Onodera.